英動画配信大手パフォームグループのスポーツ動画配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」の日本国内での会員数が、2016年8月のサービス開始から1年で100万人を突破した。NTTドコモと2017年2月に提携し、ドコモの利用者は月額980円(通常は1750円)で利用可能にした施策が加入者増に寄与したことは間違いない。

 DAZNをはじめとするOTT(Over The Top) *1 サービスが日本にも広がり、ネット経由の動画配信がテレビ放送を侵食している。ただこれまでスポーツは、一斉同報を得意とする放送向きのコンテンツだったはずだ。なぜスポーツがネット動画配信で提供できるようになったのか。そしてコンテンツ配信プラットフォームの技術はどこまで進化し、これからどこに向かうのか。アカマイ・テクノロジーズのイベント 「Akamai Edge Japan 2017」の講演のため来日した、パフォームグループのCTO(最高技術責任者)のフロリアン・ディデリクセン(Florian Diederichsen)氏に話を聞いた。

パフォームグループのCTO(最高技術責任者) フロリアン・ディデリクセン(Florian Diederichsen)氏
パフォームグループのCTO(最高技術責任者) フロリアン・ディデリクセン(Florian Diederichsen)氏
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*1 OTT(Over The Top)は、広義ではインターネット上のサービスやコンテンツなどを提供する事業者を指す。通信サービスの最も上の階層のサービスという位置付けで、垂直統合型のサービスを展開する通信事業者と区別するため、一般には通信サービスとは関係のない事業者をこう呼んでいる(ただしグーグルのようにOTTでありながら、通信インフラを使ったビジネスを展開する企業もある)。本稿では動画コンテンツをネット経由で配信する「Netflix」や「Hulu」、そしてDAZNなどを指してOTTと呼んでいる。

「流通している端末の95%に対応」

 2016年に、DAZNがJリーグの独占放映権を10年で2100億円といわれる高額で得たことは、多方面に大きな衝撃を与えた。まず放送業界。有料多チャンネル放送サービス「スカパー」のキラーコンテンツだったJリーグの全試合がネット配信サービスに切り替わったという事実は、「放送」「通信」という配信メディアをまたいだコンテンツ争奪戦の始まりを示唆している。

 日本国内のスポーツが海外のOTTから放映権を購入されるほどのコンテンツになったというボーダレス化の意味もある。さらにOTT間のコンテンツ囲い込みも始まった。17年秋には楽天が、NBA(全米バスケットボール協会)の日本国内における独占的な放映・配信パートナーになったのも記憶に新しい(ただしNBAの国内テレビ放映権はWOWOWにサブライセンスした)。

 視聴者にとって、スポーツがネット経由で視聴できるという利便性は大きい。放送局のスケジュールに合わせてテレビの前にいなくてはいけない(あるいはその代わりに放送前に録画を予約しなくてはいけない)といった面倒さから開放される。日本でマイナーな競技など放送には乗らない試合も、相応のコストを支払えば(無料の場合もあるが)リアルタイムで視聴できるサービスもある。

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