GEヘルスケアのグローバル本社で、ライフサイエンス チーフ デジタルマーケティングエバンジェリストなどを務めた飯室 淳史氏が2016年9月15日に同社を退職し、個人事業主となった。10月21日には同氏が開発した「B2Bハックカード」を公開し、企業向けのコンサルティング活動のツールとして活用している。

 飯室氏はGEヘルスケアで、営業統括責任者やマーケティング本部長など双方の立場を経験。2015年にはGEヘルスケアの全世界のデジタルマーケティング戦略を日本から統括するグローバルリーダーとなった。その過程で、営業支援システムや顧客管理システム、マーケティングオートメーション(MA)の導入に関わったが、プロジェクトが思い通りにいかない経験もした。

 プロジェクト企画書などの品質には差がなかったことを振り返り、飯室氏がたどり着いた問題点はプロジェクトのメンバー、関与する社員、影響を受ける顧客に「アクセプタンス(Acceptance)」が低かったこと。そこで「プロジェクトの効果を高めるため、アクセプタンスの向上を考えるようになった」(飯室氏)。

 ここから飯室氏は、アクセプタンスの低さを解決するためのコミュニケーション戦略を設計する。「アクセプタンスを高めるには、その人が何をどう理解したかが重要」「理解した後に、共感することでその人が行動が変わる」「行動が変わるのは、その人自身の課題を解決してくれる相手に対してだけ」というものだ。

 こうして「その人のゴールを理解して、一緒に解決するためのコミュニケーションを可能にする」(飯室氏)ツールとして開発したのが、BtoBハックカードである。実際にコンサルティング対象とカードを使いながらコミュニケーションをしていく。

写真●「BtoBハックカード」を使った、現状からゴールを導く戦略策定
写真●「BtoBハックカード」を使った、現状からゴールを導く戦略策定
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 例えば「現状」から「ゴール」を導く戦略策定は、12枚のカードで整理する。現状からゴールの過程にある、「ギャップ」を認識し、「戦略」を立て、「ロードマップ」を作る。このステップに必要な要素がカード化されており、カードを並べてコミュニケーションを取りながら現実のビジネスに当てはめて行く。

 これ以外にも、経験で培ったB2B事業会社の生涯顧客価値戦略の策定では、別の11枚のカードセットも用意している。既に複数の企業にプロトタイプを見せながら議論を始めており、新たな問題解決や戦略策定のためにカードの種類を増やしていくという。

 このコミュニケーションの結果、相手とは共通言語が理解でき、その共通言語を使ったコンセプトや価値観などを理解・共有できる。相手は自ら考えて、コミュニケーションの中で整理したコンセプトや価値観などに従った行動を取れるようになる。コミュニケーションの過程で出来上がったカードの配置が、「実行できる具体的な業務プロセスとなる」(飯室氏)という。

 飯室氏はカードの効果として、明文化されていない暗黙知を含めビジネス上の基本要素などを実体化できること、簡単なアイコンを使ったカードで実体化することで言葉の定義を明文化できること、思考プロセスに必要なポイントをカードとして目で見て触れることなどを挙げている。

 飯室氏は、グローバルでのリーダーシップ経験を基にしたコンサルタントとして活動を始めており、会員制ブログ(http://www.b2bhack.com/)を運営している。コンサルティング活動の中で、同カードの活用を始めているという。