「マンション販売は車などと違って、同じものを何戸も売るものではありません。物件内の全部の部屋を売り切れるように営業責任者がバランスを取って、部屋とお客様を結び付けなくてはなりません」。野村不動産 関西支社 住宅営業部副部長 兼 営業推進課長の松岡秀明氏はマーケティングオートメーション(MA)を使った販促支援のポイントをこう語る。「それぞれの部屋に興味を持っているのが誰なのかを見られるようにしました」――。
マンション販売は購入者こそ一般消費者だが、販売単価が高く、要する時間が長く、営業担当者が見込み客に個別にアプローチするなどBtoBビジネスと通じるところがある。実際、野村不動産によるMAの活用は、BtoB企業のそれに似た部分も少なくない。
松岡氏は2017年3月末まで勤務していた住宅事業本部営業推進部で約半年、東京・武蔵野市のマンション「プラウドシティ武蔵野三鷹」のプロモーション活動に携わった。マルケトのMA使ってアプローチした見込み客の来場率は、使わなかった見込み客の来場率と比べて1割強(111%)高く、契約率は2倍弱(184%)に高められた。
同物件で培ったノウハウの展開も始めている。2017年8月下旬現在で首都圏の3物件と松岡氏が勤務する関西地区で2物件、さらに東海地区で3物件でのMAの活用を予定しており、さらに増えていくという。
見込み客を属性スコアと行動スコアの2軸でマッピング
松岡氏は「マンション販売は、『反響(資料請求)』は獲得しやすいのですが、そこから、実際の『来場』に持っていくまでのハードルが高いのです。営業の現場で効率的にお客様を来場に導くためにMAが使えるのではと、以前から興味を持っていました」と振り返る。
MA導入によって当然コストも発生するため、成果を見込めそうな物件を選定して、導入のタイミングをうかがってきた。白羽の矢が立ったのが、300戸を越える大型物件であるプラウドシティ武蔵野三鷹だった。
マンション販売は、物件情報を開示してからモデルルームを開くまでに2~3カ月、それから第1期の販売が始まるまでにさらに2~3カ月の時間を要する。プラウドシティ武蔵野三鷹も、2016年9月にサイトを公開してから約半年後の2017年3月に第1期販売がスタートした。
まず最初の告知に使ったのは、(1)約30万人が登録している野村不動産が運営する会員組織、(2)不動産ポータルサイト、(3)不動産広告に関心を持つユーザーに向けたネット広告である。こうして最初の「資料請求」に、2017年3月時点で3700件を集めた。