「お墓は450年に1回しか建てないといわれるほど購買頻度が低いものです。そしてお客様によってお墓に関わる状況が大きく異なるのです」――。1747年創業の山崎石材店の13代目、山崎哲男代表取締役はこう話す。「だからこそ電話をかけてきたお客様にお墓についてしっかり理解していることを伝えて、相談してもらえるようにする仕組みが必要でした」。同社が扱うもは墓石など一般消費者向けの商材がほとんどだが、BtoB企業にも通じる考え方で顧客に接している。
茨城県常総市水海道に本店を置く山崎石材店は、CRM(顧客関係管理システム)やCTI(Computer Telephony Integration)、ファイル転送システム、業務用SNS、Google Maps、そしてAWS(Amazon Web Services)やクラウドPBXを組み合わせたITシステムを構築し、6年前に比べて売り上げを1.7倍、顧客数を2倍に伸ばした。
墓石を中心とする石材ビジネスは、2000年からの10年で市場規模が4500億円から3000億円へと33%も縮小しており、さらに低落傾向にある。その中で同社が売り上げを伸ばせているのは地域を超えた商圏の拡大と、「お客様の要望をかなえる」営業スタイルがITシステムの支援によって可能になったからだ。
「父の頭の中の情報」を顧客データベースで見える化
山崎氏にはかつて、ほかの会社でデータベースソフトの「FileMaker」を使った経験があったという。そして実家に帰り石材店の仕事を始めた際に、FileMakerを使ったCRMを独力で作り始めた。顧客からかかってくる電話に対応するため、先代(山崎氏の父)の頭の中にある情報を見える化する必要に迫られたからだ。
「父の頭の中には、このお墓はどのお客様のもので、どこに住んでいて何をしている人かといった情報が全て入っています」(山崎氏)。しかし経験が浅かった山崎氏が電話で応対しようにも顧客の情報が分からず、顧客とコミュニケーションがうまく取れないことが課題になっていた。