「自社のビジネスにおける決定的瞬間とはいつで、それは何によってもたらされるのか。それを考えるべきときがきた」――。

 2017年2月21日から22日まで、東京・有明の東京コンファレンスセンター・有明で開催中の「ガートナー カスタマー 360 サミット 2017」の基調講演で、ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストのエド・トンプソン氏はこう話した。

 トンプソン氏は、ガートナーにおけるカスタマーエクスペリエンスの第一人者だ。「顧客戦略を形作る『決定的瞬間』」捉えよ」と題する講演で、企業が顧客との良好な関係性を構築する際に重要な要素となる「決定的瞬間」と、「決定的瞬間をもたらす要因」について解説した。

ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストのエド・トンプソン氏
ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストのエド・トンプソン氏
(撮影:下玉利 尚明)
[画像のクリックで拡大表示]

 トンプソン氏は、まずスカンジナビア航空を再建したヤン・カールソン氏の著書「真実の瞬間」を引き合いに、顧客が企業の商品やサービスの本当の質を判断する「真実の瞬間は、わずか15秒間ほどの出来事である」と説明。例えば「ホテルの部屋に入った瞬間の暖かさ」など、「企業の成功の鍵は顧客との『最初の15秒間』にある」と強調した。

 その上で「決定的瞬間もわずか15秒程度のこと。その出来事から何を学び、顧客戦略にいかに適用すべきか。顧客戦略にどう落とし込んでいけるかを考えるがことが重要だ」と述べた。

 ただし、顧客との関係性においては、「いつ決定的な瞬間が起こるのか」を予見することは難しい。トンプソン氏は、ガートナーが企業に対して実施したインタビューをもとに、「組織において決定的瞬間をもたらす要因」には「新任CEOの就任」「新製品の開発」「新規チャネルの開拓」「新規顧客の獲得」「新たな競合の出現」「他社との合併」「新規テクノロジー」があると指摘した。

 「例えばIBMでは1993年4月の新任CEO、ノキアでは紙の製造からスタートしゴム、ケーブル、携帯電話など次々に新製品を開発したことが『決定的瞬間』だった」(トンプソン氏)という。

 しかし、「実際にはCEOの平均在任期間は4.9年と短く、企業における決定的瞬間となりにくい」(トンプソン氏)。同時に、タクシー業界における「Uber」のように、新規の競合が登場して、業界のビジネスモデルを一変させてしまうような決定的瞬間がもたらされることも「めったにない」(トンプソン氏)。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。