セイノー情報サービスは1984年に西濃運輸(現セイノーホールディングス)の情報システム子会社として産声を上げた。グループ内の物流リソースとシステム開発で培った技術を基盤に、物流サービス事業とIT技術サービス事業を展開している。
同社は2015年秋にマーケティングオートメーション(MA)を導入し、同年度にグループ外売上比率5割超を達成した。ここ10年の「クラウド化」と「物流業務改革」というトレンドを事業拡大の推進力に変えながら、さらにデジタルマーケティング活動で新規顧客を開拓している。
同社の取り組みを解説するシリーズの前編にあたる今回は、情報システム子会社であるセイノー情報サービスがグループ外ビジネスを拡大した背景やシステム面と業務面の環境変化、MA導入の経緯をまとめた。
セイノー情報サービスは西濃運輸の情報システム子会社として発足。設立当初の主なミッションは、同社が「物流ERP」と呼ぶ、業務システムの開発だった。「2000年ころはグループ内から派生する業務が大部分を占めていました」と代表取締役社長の鳥居保徳氏は振り返る。
転機となったのは、2004年に実施したメインフレームからオープン系システムへの移行、いわゆる「ホストマイグレーション」である。その数年前からメインフレーム中心の事業モデルを見直し、「物流ソリューション日本一を目指す」というかけ声の下、以前から取り組んできたグループ外への販売をより拡大する方向にかじを切った。
目指したのは、物流管理のBPO(Business Process Outsourcing)事業の拡大である。ITのクラウドサービスに加えて、マネジメントセンター(コールセンター)による物流関連アウトソーシング型サービスの二本立てでビジネスを展開している。
会社全体でクラウドにドライブ
こうした成り立ちを持つ同社に、ここ10年ほどで二つの追い風が吹いた。システム面での「クラウド化」とアプリケーション面の「物流業務変革」である。
まずクラウド化。グループ外への販売拡大を始めた当時、同社はASP(Application Service Provider)として、WMS(倉庫管理システム)を中心にビジネスを展開していた。「グループが持つデータセンターを活用したことで、競合他社よりも高い価格競争力を持てました」(鳥居社長)。
そのうちにシステムのキートレンドが「ASP」から「クラウド」へと変化していく過程で、パッケージ(オンプレミス)型の物流システムを展開していた競合企業が撤退していく。導入企業からすればオンプレミス型よりもコストが抑えられ、システムの運用/保守に手がかからないクラウド型が使いやすい。