今回はマーケティングオートメーション(以下MA)の導入や、MAで管理するリードデータの収集予算を獲得することがなぜこんなに大変なのか、を会計的に説明します。

 学者として現代マーケティングに極めて大きな足跡を遺したハーバード大学の故T・レビット博士は、1960年代の著作の中で、

「企業の最も重要な資産は顧客情報である」

 と説いています。

 しかし、残念ながらレビット博士の遺志を反映して顧客情報を重要な資産として扱っている企業はほとんどありません。そもそも会計上でも「資産」として扱っていないのです。

 私は、この重要な資産を管理会計上も「資産」に計上することを提案しています。

 会計用語で「資産」とは、「流動資産」と「固定資産」に分類されます。流動か固定かは「1年以内に現金化が可能か?」が基準になります。私は、リードデータ(顧客・見込み客データ)は本質的にはこの「固定資産」の無形固定資産が勘定科目として最もふさわしく、それを取得原価ベースで、つまり展示会等への出展コストや名刺のデジタル化の費用で資産計上すべきと考えています。

 BtoBのマーケティング予算の中で最も大きいのはリードデータの収集活動である「リードジェネレーション」です。展示会の出展、共催セミナー、WebのSEOなどリードデータを収集するためのコストが最も高く、それ以外はあまりかからないのがBtoBマーケティングの特徴とも言えます。これは米国でも同じで、米国ではターゲットの個人情報を購入することが法的に可能なので、リスト購入費というのがマーケティング予算の大きな部分を占めるケースが多いのです。

 ではBtoB企業はなぜマーケティング予算の大半をリードジェネレーションに使うのでしょうか? それは通常のBtoBマーケティングは多くのリードデータを必要とするからです。BtoCが不特定多数なら、BtoBは特定多数をターゲットにします。「特定」ですが「多数」なのです。例えニッチな分野でターゲット企業の数は少なくても、そこに所属する個人は膨大な数になります。このことは東京ビッグサイトなどで開催される専門性の高いイベントとその来場者数を見れば分かるでしょう。

◇ 高機能プラスチック展  5万7000人
◇ 金型展         4万6000人
◇ ヒューマンキャピタル  2万人
◇ 真空展         1万1000人
◇ 国際粉体工業展     1万5000人

 こうした専門性の高いイベントで収集したリードデータに対してナーチャリングや絞り込み(スコア:クオリフィケーション)を行います。つまり米国でも日本でもBtoBマーケティングとはハウスリストと呼ばれる保有リードデータに対するマーケティングが主流なのです。

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