先進的な企業は、ビジネスの競争優位性を保つために、ITの新技術を積極的に取り入れている。だが、ITの新技術には相応のリスクが伴うため、安全に利用するには、セキュリティ対策を強化する必要がある。特に、サイバー攻撃に対しては、ファイアウォールなどの“伝統的な”対策に加えて、未知のマルウエアの検知といった新しい対策が必要だ。

 そこで、ブルーコートシステムズとITpro Activeは2014年10月7日、各分野のセキュリティ専門家を招き、犯罪者によるサイバー攻撃の動向や、新しいセキュリティ対策の姿を解説するイベント「セキュリティ・ブレークスルーサミット」を、東京で開催した。基調講演では衆議院議員が日本の対策を、特別講演ではデロイトトーマツサイバーセキュリティ先端研究所が企業の対策について紹介した。

米Blue Coat Systems ワールドワイド・フィールドオペレーション担当 シニア・バイスプレジデント マーク・アンドリュース氏
米Blue Coat Systems ワールドワイド・フィールドオペレーション担当 シニア・バイスプレジデント マーク・アンドリュース氏

 主催者挨拶では、米Blue Coat Systemsのマーク・アンドリュース(Marc Andrews)氏が登壇し、同社のビジネスの現況を説明するとともに、同社の今後の方向性にも触れた。昨今特にニーズが高まっているのは、暗号化されたSSL通信をネットワーク上で検閲できるようにすることであり、同社は以前からこのような機能に注力してきたという。

基調講演
豊かさ増すIT社会に向け、法整備で堅実なセキュリティを

 基調講演では、衆議院議員としてサイバーセキュリティに取り組んでいる平井たくや氏が登壇。サイバー攻撃に対する日本のセキュリティ対策の現状について紹介した。法整備によってセキュリティ対策の優先度を上げ、2020年には新しいIT技術の活用とセキュリティを両立した豊かな社会を実現するとした。

衆議院議員 平井 たくや氏
衆議院議員 平井 たくや氏

 平井氏は、議員としての活動のなかで、サイバーセキュリティに重きをおいて取り組んできたと述べた。2011年から「サイバーセキュリティ基本法案」の原案を提案しており、今回の国会での成立を見込んでいるという。

 この法案の背景には、セキュリティの重要性が増しているという状況がある。ニュースでは、企業による個人情報の漏えいといった事件がよく報じられている。従来はコストの一部としてセキュリティ対策をとらえていたが、これからは戦略的投資としてとらえないと日本を守ることはできないと平井氏は訴えた。

 法律が成立すればセキュリティの優先度は上がる。また、法整備とともに、企業におけるCSIRTのように、国家のサイバーセキュリティ戦略本部を設置することになる。そうなれば、法体系の整備とワークフロー権限の明確化を実現する初めての国になるという。

 現在は、内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)を含めて、人材確保に取り組んでいる。ただし、最優秀なセキュリティ専門家20人のトップガンを作ることを目指しているわけではなく、リスク管理ができる人材の育成が目的という。

 平井氏は、国家の成長にはITが不可欠とし、ITによってITのリスクは解決できると語った。また、先進技術(ハイテク)の普及が進むほど、人間同士の触れあい(ハイタッチ)が大切になっていくとした。

いまは第三次産業革命の真っ只中

 平井氏は、2014年の現在を、グローバル化とデジタル化による第三次産業革命の真っ只中であると形容する。これからさらに変革は加速するが、ITによる変革は、蒸気機関や電気石油による変革よりも大きな変化をもたらすのではないか、と展望した。

 日本政府がITに積極的に取り組み始めたのは、2001年頃のこと。当時は、通信インフラの整備などが重点施策となっていた。そして目論見通り、コンピュータとインフラ環境は、ムーアの法則に則って急成長を遂げた。

 2001年当時はDSL回線の問題が議論されたが、現在はモバイル回線のスピードが急伸した。コンピュータの処理能力の点でも、米IBMが当時、UNIXをベースに開発したチェス専用スーパーコンピュータ「Deep Blue」よりも、現在のiPhoneの方が高性能であるという。

 平井氏は、今後、これまでよりもさらにITによる急激な変化が進むとし、日本経済新聞社が選んだ「今後成長が期待できる企業」50社のうち、実に28社がIT企業である点を傍証として挙げた。提示された社名リストの1位はクックパッドである。

 淘汰、進化、創出の後には、新しい社会、豊かな社会が広がっているはず、と平井氏は言う。そして、そのためにはセキュリティが重要になる。

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