サーバー(コンピューティング)、ネットワーク、ストレージをバラバラに組み合わせてシステムを構築する従来型の手法には大きな課題がある。ビジネスの要求に素早く対処する俊敏性や、ビジネスの成長に合わせた拡張性に乏しいことである。こうした背景から、サーバー、ネットワーク、ストレージを一つに統合したコンバージド・インフラストラクチャが期待を集めている。

 そこでITpro Activeでは2014年11月28日、期待されるコンバージド・インフラストラクチャをテーマとした製品選択支援セミナー「コンバージド・インフラストラクチャ~見えてきた次世代のプライベートクラウド/仮想化基盤~」を東京で開催した。

 基調講演では、市場調査会社IDC Japanのアナリストが企業のIT部門が抱える課題の現状とコンバージド・インフラストラクチャによる解決の可能性についてまとめた。製品サービスを紹介するベンダー講演はランチセッションを含め、全5セッション。日本ヒューレット・パッカード、ニュータニックス・ジャパン、デル、VCEテクノロジー・ソリューションズ、日商エレクトロニクス、の5社が登壇した。最後に主催者講演で、日経コンピュータの副編集長が次世代インフラストラクチャの動向をまとめた。

基調講演:IDC japan
ビジネス要求に対応できるIT部門を作れ

 基調講演では、市場調査会社IDC Japanの福冨氏が、サーバーインフラストラクチャーに現在起こっている変化と、統合型システムがビジネスにもたらす効果について解説した。

IDC Japan サーバー グループマネージャー 福冨 里志氏
IDC Japan サーバー グループマネージャー 福冨 里志氏

 「現在は、クラウド、ビッグデータ、ソーシャル、モビリティの四つの要素で成り立つ第3のプラットフォームの時代」―。福冨氏は冒頭、このように時代の流れを表現した。さらに、第3のプラットフォームの上では、従来型のビジネスプレーヤーがITサービスを提供する時代になっていると指摘した。

 例えば、従来ITサービス会社ではなかった会社、つまり、電力系や自動車関連、流通系の会社などが、業界特化型のITサービスを提供する側になっているという。福冨氏は、こうした動きをAWS(Amazon Web Services)事業を始めた米Amazon.comにならって「アマゾニング」と呼んでいる。

 特に米国では、こうした産業特化型のサービスが活発だという。例えばゲノム解析のイルミナ社は、遺伝子の配列を読み取るためのストレージと分析ソフトウエアをマーケットプレース化してサービス提供している。

 同じ業界の中に、先行してITサービスに参入する企業が出てくると、参入しない競合企業は大きなダメージを被ってしまう。同業他社の動向を黙って見ているだけだと、気が付いた時には差が付いてしまっている。こうした脅威への対策として“アマゾニング”は最善だと福富氏は指摘する。

IT部門は運用に追われ、ビジネスに貢献できていない

 “アマゾニング”が進む背景には、ITを導入するユーザー層の変化もある。実際、ユーザー企業のIT投資額の61%が事業部門で予算化されており、IT部門で予算化されているのは39%だけ。しかも、IT部門単独で進めているプロジェクトはわずか19%しかない。

 ユーザー部門からみると、最近ではビジネスの要求に合わせて社外のリソースを柔軟に使える体制が整ってきている。その一方、IT部門はタイムリーに対応できていない。そのため、「スピードが求められる案件については、外部のサービスを使おう」という流れができ始めた。

 経営課題と施策についての調査では、ほとんどの企業が経営課題として「事業収益化の強化」を挙げたという。事業収益を増やすには、新たな機会を作るか、機会損失を減らすか、逸失利益を回避するしかない。このためにITを活用し、例えば営業力の強化を図るといった具合である。

 その一方で、IT部門はお馴染みの課題をいまだに抱えている。調査結果によると、課題のトップ4は、運用管理の効率化、災害対策、スタッフのスキルアップ、資産の有効活用。ビジネスの成功のために改善すべき課題があるのに、それ以前のことで悩んでいる。福富氏によれは、この状況は、3年後も変わらないという。

 この足踏み状態の解消に役立つのが、仮想化技術による運用コストの削減だという。サーバー統合に始まり、サーバー仮想化、運用の自動化、オーケストレーション、という流れである。ところが、運用の自動化で大きな壁があり、ここを乗り越えられる企業はまだ少ないのだという。

仮想化が進むも、運用スキルが追い付いていない

 続いて福冨氏は、サーバー仮想化の利用実態についての調査結果を示した。サーバー仮想化の「活用レベル」(仮想化しているアプリケーションの割合)と「運用レベル」(スキル)を評価した指標をまとめた表である。

 運用レベルが平均以上の企業は11.8%(40社)しかない。その一方で、運用レベルが平均以下なのに活用レベルが平均以上に高い会社が54.0%(183社)もある。

 業界別にみると、情報サービス産業は運用レベルが高く活用レベルが低い傾向にある。一方で、製造や流通は、運用レベルが低く活用レベルが高い傾向にある。

 ここから分かることとして福富氏は、情報サービス産業は運用スキルを持っており、情報サービス産業の力を借りることによって、多くの企業は自動化の壁を超えることができるのではないか、と語った。

コンバージドインフラがIT部門の対応力を高める

 講演の結論として、福冨氏が説いたのは、統合型のインフラストラクチャーの重要性である。サーバー、ストレージ、ネットワークを一体化して融合させたコンバージド・インフラストラクチャによって、IT部門の対応力が向上し、ユーザー部門との関係を築くことができるようになるという。

 とりわけ、ストレージを内蔵した汎用のラックマウント型PCサーバーをベースに、複数のサーバーきょう体にまたがって共有リソースプールを形成できるようにした「ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ」に注目が集まっているとした。

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