IsilonSD Edgeの仕組み。VMware仮想アプライアンスとして実装している。ノード1台につき1台の物理サーバーを利用する(出所:EMCジャパン)
IsilonSD Edgeの仕組み。VMware仮想アプライアンスとして実装している。ノード1台につき1台の物理サーバーを利用する(出所:EMCジャパン)
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 EMCジャパンの「IsilonSD Edge」は、非構造化データの格納に適したスケールアウト型NASストレージ「Isilon」の新モデルで、VMware環境で動作する仮想アプライアンス版である。仮想サーバーの上にIsilonのストレージOS(OneFS)をそのまま載せており、これまでのハードウエアアプライアンスと同じ機能が利用できる。IsilonSD Edgeを使えば、中小規模の遠隔拠点において、ハードウエアアプライアンスよりも安価にIsilonストレージを導入できる。米EMCでは、データのレプリケーション機能を使って本社のデータセンターとデータを同期させる使い方を想定している。

 企業の遠隔拠点には、ストレージが無秩序に管理されているなど、様々な課題がある。こうした背景から、本社のデータセンターだけでなく、遠隔拠点にもIsilonを導入し、本社と拠点を含む全体を一元的に管理する需要があるとしている。仮想アプライアンス型としてライセンス費用を抑制することで、これまでハードウエアアプライアンスを導入できなかった中小規模の遠隔拠点にもIsilonストレージを浸透させる狙いがある。

 IsilonSD Edgeは仮想アプライアンスだが、物理サーバー1台につき仮想アプライアンス1台の構成で使わなければならない。最小構成は、ハードウエアアプライアンスと同様に3ノード(物理サーバー3台)になる。物理サーバーとノードを一致させることで可用性を高めているほか、ハードウエアアプライアンスと同等の使い勝手を実現している。ノード間接続(物理サーバー間の接続)は、Isilonシリーズとしては初めてイーサネットを使う。これに対して既存のハードウエアアプライアンスのノード間接続はInfiniBandに限られている。IsilonSD Edgeの最大ノード数は6台で、この時に最大36Tバイトのストレージとして利用できる。

 ライセンスは、商用利用は有償だが、検証評価を含む非商用であれば無償。まずは使ってみて、気に入ったら後からライセンスを購入できる。汎用のPCサーバーを3台用意して、ダウンロードしたIsilonSD Edgeをインストールすれば使い始められる。

OSも新版に。オブジェクトストレージを含めて階層化

 IsilonSD Edgeの提供に合わせて、IsilonのOS(OneFS)も新バージョンに更新する。新バージョンで追加する機能の1つが「Isilon CloudPools」で、Isilonストレージが備える階層化機能「SmartPools」を、Isilonクラスターの外部にあるオブジェクトストレージにまで拡張するものである。あらかじめ定義した自動階層化のポリシーに合わせて、例えば1年間更新がなくアクセスもないファイルをオブジェクトストレージに退避できる。Isilonストレージ上にはファイルのメタデータが置かれており、ユーザーやアプリケーションからはファイルの実体がどこに置かれているのかを意識することなくアクセスできる。

 元々のSmartPoolsは、異なるモデル間で自動階層化を実現する機能である。Isilonストレージには、性能と容量のどちらを重視するかによって、性能重視モデルや容量重視モデルがある。性能重視モデルをクラスターに追加すると、クラスター全体において、容量よりも性能をより多く拡張できる。容量重視モデルをクラスターに追加すると、クラスター全体において、性能よりも容量をより多く拡張できる。これら異なるモデル間でデータを自動階層化する機能がSmartPoolsである。

 Isilon CloudPoolsでは、外部のオブジェクトストレージとして、米AWS(アマゾンウェブサービス)、米Virtustream、Microsoft Azureという三つのクラウドサービスと、オンプレミス向けには米EMCのストレージ抽象化ゲートウエイ装置「Elastic Cloud Storage Appliance」(ECS Appliance)を利用できる。ECS Applianceは、ブロックストレージ構築ソフト「ScaleIO」と、ストレージプロトコルの変換ゲートウエイソフト「ViPR Data Services」を載せたアプライアンス装置である。

IsilonSD Edgeの概要
用途と機能非構造化データの格納に適したスケールアウト型NASストレージ
新モデルの特徴仮想アプライアンス型とすることで遠隔拠点向けに費用を抑えた
想定する主な用途ハードウエアアプライアンスが買えない中小規模の遠隔拠点に導入し、データのレプリケーション機能を使って本社のデータセンターとデータを同期させる使い方
稼働環境最小構成は3ノードで、VMware ESXiを導入した物理サーバー3台それぞれに仮想アプライアンスを導入する。物理サーバー間の接続はイーサネットを使う。最大ノード数は6
最大容量最大ノード構成時(6ノード時)に最大36Tバイト
価格検証評価を含む非商用であれば無償。商用利用は有償で、個別見積もり。2015年11月現在、EMC社内で価格を検討中
発表日2015年11月16日
出荷日2016年第1四半期