日本IBMは2017年7月18日、メインフレームの最上位モデルの新機種「IBM z14」を発表した。同年9月13日の出荷を予定する。最大の特徴は、システムに関わる全てのデータを、OSレベルでハードウエア暗号化できるようにしたこと。暗号化回路の強化と、OS「z/OS」に追加した暗号化機能によって実現する。z14に合わせてOS新版を提供するとみられる。
既存の最上位モデル「IBM z13」(2015年3月出荷)と比べて、ハードウエア性能を高めている。特に、暗号化処理のための専用回路に搭載するトランジスタ数を4倍に増やした。暗号化処理の性能はz13比で最大7倍に高まっており、1日あたり120億件を超える暗号化トランザクションを処理できるようになったという。これにより、データベースの一部の項目といった限定的な使い方ではなく、システム上の全データを暗号化できるようになったとしている。
新たなストレージ接続インタフェース「IBM zHyperLink」も搭載した。新設計の専用アダプタ間を光ファイバで接続することによって、現行のファイバ接続でz13と接続した場合と比べて、レイテンシー(遅延時間)を10分の1に短縮し、アプリケーションの応答時間を50%短縮したとしている。
ストレージI/Oの高速化によって、データベース管理システムの性能が向上するほか、ビッグデータ分析なども高速になる。さらに、データをロードするメモリーの容量も、z13(最大10Tバイト)の3倍となる32TBを搭載できる。SIMD(Single Instruction Multiple Data)命令の拡張によって、並列処理も効率化している。
外部にWeb APIを公開してクラウドと連携する用途に向けて、Javaアプリケーションサーバーを高速に動作させるための工夫も施した。まず、Javaのコードを処理するために50種類以上の命令セットを新規に追加した。また、ハードウェアおよびソフトウェアの実装によって、使われていないオブジェクトをメモリーから開放するGC(ガベージコレクション)による停止時間を従来の10分の1に短縮したとしている。これを同社はポーズレスGC(停止しないガベージコレクション)と呼んでいる。
用途と機能 | メインフレームの最上位モデル |
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主な特徴 | 性能の劣化なく全データを暗号化できること ストレージ接続インタフェース「IBM zHyperLink」によってI/O性能を高めていること Javaアプリケーションを高速に実行する工夫を施したこと |
暗号化処理の性能 | 暗号化専用回路に搭載するトランジスタ数を4倍増。暗号化処理の性能はz13比で最大7倍に高まった |
ストレージI/O性能 | ストレージ接続インタフェースのIBM zHyperLinkによって、現行のファイバ接続でz13と接続した場合と比べて、レイテンシー(遅延時間)を10分の1に短縮、アプリケーションの応答時間を50%短縮した |
メモリー容量 | z13(最大10Tバイト)の3倍となる32TBを搭載できる |
Java実行性能 | Javaのコードを処理するために50種類以上の命令セットを追加した。また、GC(ガベージコレクション)による停止時間を従来の10分の1に短縮した |
発表日 | 2017年7月18日 |
出荷日 | 2017年9月13日 |