ITpro Successは2016年3月、“中堅中小企業が目指すべき「攻めのIT、守りのIT」”と題したセミナーを、名古屋(3/2)、大阪(3/8)、東京(3/10)の3会場で開催。マイクロソフトやインテルなどから講師を招き、「セキュリティ重視時代にビジネスを加速・成長させるためのモバイルワーク環境とは?」を論じてもらった。ここでは東京会場の内容をレポートする。

「テレワーク週間」参加の650社超の6割以上が中堅・中小企業

日本マイクロソフト 平野氏の講演から

 基調講演では、日本マイクロソフトの取締役 代表執行役 社長 平野拓也氏が、「2016年 働きがいのある会社ナンバーワン企業が語る!※ ~マイクロソフトが実践したワークスタイル変革と攻めと守りのIT活用~」と題し、同社のミッション、モバイルワークへの取り組み、そして中堅中小企業のワークスタイル変革に向けた同社の支援について紹介した(写真1)。

※Great Place to Work Institute Japan(GPTWジャパン)実施。「2016年版 GPTW働きがいのある会社ランキング 大企業部門(従業員1000名以上)」

写真1●日本マイクロソフト 取締役 代表執行役 社長 平野拓也氏
写真1●日本マイクロソフト 取締役 代表執行役 社長 平野拓也氏

 日本マイクロソフトは、働きがいのある会社ランキングでナンバーワンに選ばれ、ワークスタイル変革は「当社のビジネスのコア中のコアになっている」(平野氏)。だが実は、以前は多くの日本企業が共通で抱える経営課題に直面していたという。つまり同社は、自らワークスタイル変革に取り組んできた企業である。

 同社では、東日本大震災以降、「テレワーク週間」を実施している。震災のあった翌日あるいは翌々日、同社の社員はオフィスには来ていなかったがテレワークができる環境があり皆働いていた。顧客に連絡を取り、どのようなビジネスへの支援ができるかを伝えていたという。これがきっかけとなり、取り組みを毎年継続することにして「テレワーク週間」として定着させている。2014年には外部の顧客・パートナーに拡大し、32の企業や組織と共同で実施。同社の持つ最新のソリューションやテクノロジーを賛同企業が活用しながら、モバイルワークを実践していく取り組みを進めてきた。平野氏は「2015年にはよりスケールアップし、政府と連携するなど650強の企業・組織から賛同してもらって実施した。しかもその60%は、中堅・中小企業だった」と語り、モバイルワークの実践が企業規模に関わらず可能なことを示した。

事業生産性が26%改善、仕事環境に対する満足度も約40%向上

 平野氏は、「多くの企業にとって、グループ間の情報共有、業務の生産性向上、コスト削減といった課題があり、その上でモバイルワークを導入しようとすると企業風土をどう育むかといった問題も起きてくる」と指摘する。同社では、それらの問題を解決してモバイルワークを実践したことで、一人当たりの事業生産性が26%改善されたという。従業員のワークライフバランスに対する満足度は約40%改善。女性の離職率が40%下がり、コストも下がっていることを示した。

 同社はどのようにしてモバイルワークの導入を成功させたのだろうか。平野氏が最初にポイントとして挙げたのは経営ビジョンだ。ワークスタイル変革を成功させる鍵は、ソリューションでもテクノロジーでもなく、『人』であると指摘。「モバイルワークの導入で何をどう改善し、どういった効果を求めるか、経営者が明確なビジョンを持っているかにかかってくる。ワークスタイル変革とは、総務部の仕事でも人事部の仕事でもIT管理者の仕事でもない。経営者が強い気持ちを持って取り組むべき経営課題である」(平野氏)。また「制度・ポリシー」、「オフィス環境」「ICT活用」などもポイントとして挙げた。

モバイルワーク導入に必要な視点は、「攻め」と「守り」

 モバイルワークの導入にあたっては、「攻め」と「守り」の両方の側面を検討することが重要だという。「攻め」とは、モバイルデバイスやテクノロジーを活用し、時間や場所などの制約なしに仕事できる環境を整えることだ。「クラウドとデバイスを上手に組み合わせることで、非常に安価に『いつでもどこでも仕事ができる環境』を整えることができる」(平野氏)。

 一方、「守り」としては、サイバーセキュリティの重要性を挙げ、「現在では、サイバー攻撃から防御するだけではなく、何らかの侵入を前提としたセキュリティ対策も重要」(平野氏)と指摘。デバイスのセキュリティの例として、Windows 10に搭載された顔認証システム「Windows Hello」の有効性を紹介した。

 平野氏は、「マイクロソフトは、米国国防総省の次に多くのサイバー攻撃を受けている組織だ。何万人もの従業員が働いているが、そのセキュリティについては、自社のセキュリティソリューション以外、他社のものは一切、採用していない。Windows 10と自社のクラウドソリューションで十分だと考えている」と語った。セキュリティの脅威やクラウド関連技術がどんどん変わっていく昨今、Windows 10はバージョンアップではなく常に無償でアップグレードし続けるというコンセプトに基づき、自動更新により常に最新のセキュリティと機能が使えるという。

 また平野氏は、東日本大震災以降に、東北地方で海外からのインバウンドの集客を目指し起業されたベンチャー企業の事例を挙げ、Windows 10とクラウドサービスを組み合わせて攻めのIT、守りのITに使っている中堅・中小企業が既にあることを強調し、講演を締めくくった。

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