ストレージ大手ベンダーが、オールフラッシュ構成の垂直統合型のマシンを相次いで発売した。フラッシュストレージの高速性を生かした仮想環境を、動作検証や複雑な設定をせずに利用できる。データウエアハウス(DWH)や仮想デスクトップなどの環境を短期間で構築したいときに向く。
中堅・中小規模の企業で、データウエアハウス(DWH)やCRM(Customer Relationship Management)、仮想デスクトップといった情報系システムを新たに構築する動きが増えつつある。顧客データを分析したり、端末の管理をしやすくしたりといったニーズがある。ただ、インフラ担当のITエンジニアの人的リソースが不足し、二つの悩みに直面するケースが多い(図1)。
一つは、必要な性能や容量を見積もりにくいこと。例えば、DWHやCRMシステムのデータベースの場合、将来のデータ量の増加にも十分に対応できる処理性能やストレージ容量を確保する必要がある。
一方で、チューニングや設定作業に手間やコストを掛けにくい。これが二つめの悩みである。
ERPなどの基幹システム用のDBやストレージでは、設計に時間を割いてチューニングに力を入れる企業もある。とはいえ、DWHやCRMといった用途で基幹システムと同様の作業工数はかけにくい。「DBのチューニングのためのライセンス料金を捻出できないと悩んでいる企業が少なくない」(ピュア・ストレージ・ジャパン マーケティング部長 阿部恵史氏)。
二つの悩みを解消する有力な策の一つは、パブリッククラウドの活用だ。初めは小規模で導入し、必要に応じて性能や容量を拡張できる。ただし、社内側の基幹システムとのデータ連携方法など、別の課題が生じる。
加えて、「パブリッククラウドでDB環境を構築するために高いI/O性能を確保しようすると、利用料金が跳ね上がりやすい」。ネットアップの高橋千明氏(コーポレート営業本部 ソリューション・アライアンス推進 ビジネスディベロップメントマネージャー)はこう指摘する。
最近になって、これら二つの悩みの解消を狙った製品が、大手ストレージベンダーから相次いでいる。仮想環境やストレージ、ネットワークを1台で実現する垂直統合型のマシンで、かつストレージとして全面的にフラッシュストレージを採用したものだ。
シスコシステムズとネットアップがこの4月に、日本市場向けにMicrosoft SQL Server用の設計を施した「SQL Server SSD Appliance powered by FlexPod」を発売した。ピュア・ストレージ・ジャパンも4月に「FlashStack Mini」も発売。次いで、EMCジャパンが6月に「VCE VxRail Appliance(オールフラッシュ)」を発売した。
これらのうちVxRail Applianceは、「ハイパーコンバージドインフラストラクチャー」と呼ばれるタイプだ。複数台のIA(Intel Architecture)サーバーに米VMwareのSDS(Software Defined Storage)ソフトである「Virtual SAN」などを組み込んである。一方、FlexPodとFlashStack Miniは、「コンバージドインフラストラクチャー」と呼ばれるタイプである(写真1)。前者がネットアップ、後者がピュア・ストレージのオールフラッシュストレージ専用機と、シスコシステムズのIAサーバー「Cisco Unified Computing System(UCS)」やネットワーク機器を組み合わせたものだ。
各社のオールフラッシュ構成の統合型マシンを販売するネットワールドの佐々木 久泰氏(マーケティング本部 インフラマーケティング部 部長)は「VMwareの仮想環境を統一感のある操作で利用したい場合はハイパーコンバージド型のVxRail Applianceが、他の仮想環境を含めた幅広い用途を検討している場合はコンバージド型が向く」と話す。