東日本大震災の発生から、3年が経過しようとしている。従来の震災対策のもろさが明らかになったITの現場は、とりわけディザスターリカバリー(DR)対策に注力してきた。その結果、「ダウンしないシステム」から「素早く復旧するシステム」へと、DR対策の軸足が移ってきた。
宮崎県下のほぼすべての自治体は、2011年3月の東日本大震災以降、宮銀コンピューターサービスの「リモートバックアップサービス」を次々と導入した。これは、「BaaS(Backup as a Service)」と呼ぶデータバックアップサービスの一つ。米EMCのバックアップアプライアンス「EMC Avamar」を利用して実現したサービスである。
サービスを導入した目的は、住民や住居などのデータの保全だ。定期的に宮銀コンピューターサービスのデータセンターにバックアップを取り、必要に応じてリストアする。
この事例で注目すべきは、ユーザーである自治体が震災を機に、それまでDR対策の主流だったクラスタリング(冗長構成)による予防対策(ダウンしないシステム)から、BaaSなどを使った復旧対策(素早く復旧するシステム)へと軸足を移したことだ(図1)。
安さが普及を後押し
復旧対策を軸としたDRでは、BaaSやバックアップ製品を使って遠隔地にデータをバックアップする。これにより、同時被災リスクを下げる。
復旧を迅速化するために、バックアップの対象は、データにとどめず、サーバーの構成イメージも含める。さらに、仮想化環境を導入し、サーバー調達にかかる時間を短縮する。
「クラスタリングによる予防対策のDRは、シングル構成の2~4倍のコストがかかる。これに対してクラウドやバックアップ製品、仮想化を使った復旧対策なら2倍に満たないコストで済む」。こう言って、ITの現場が復旧対策に軸足を移す背景としてコストを挙げるのは、アイ・ティ・アールの金谷敏尊氏(プリンシパル・アナリスト)だ。金谷氏は「予防対策には多大なコストがかかるので、DR対策を講じられない企業・団体が多かった」と話す。これに対して震災後に数多く登場した、BaaSやバックアップ製品は、予防対策の製品・サービスに比べて安価であり、DR対策のすそ野が広がった。
BaaSを提供するベンダーは、既に数十社を超えた。2011年7月という早い時期に「クラウドバックアップサービス」というBaaSの提供を始めた富士通エフ・アイ・ピーの榎本 徹氏(テクニカルソリューション統括部 クラウドサービス開発部)は、「月額3万円で遠隔地バックアップを利用できる点が評価を得ている。従来対策が遅れていた中堅・中小企業のDR対策として、急速に導入が進んでいる」と説明する。