多数のシステムを同一のストレージ基盤に統合すると、ストレージ側のレスポンス性能が課題になりがちだ。性能確保のための設定作業が複雑になり、時間も掛かる。こうした状況に対し、必要な性能を確保するQoS(Quality of Service)周りの機能を充実させた大規模向けストレージが相次ぎ登場した。

 ERP、グループウエア、デスクトップ仮想化など、データの負荷パターンが異なるさまざまなシステムを、全社規模で同一のストレージ基盤に統合するユーザー企業が増えてきた。ネットアップの河西 学氏(エバンジェリスト)は、「従業員が数千人以上の製造業などの大規模事例が出ている」と話す。

 こうした大規模な統合ストレージ基盤を整備すると、ストレージの性能をいかに確保するかが課題として顕在化しやすい。サーバー側の処理性能が十分でも、ストレージのI/O処理待ちによってシステム全体のレスポンスが低下する現象である。特にオンライントランザクション処理(OLTP)のように、高速なレスポンスが必要なシステムを統合する際には、応答性能を確保する設計が重要になる。

 ところが、従来のハイエンドストレージ製品では、こうした性能確保の設計や設定作業が複雑になりがちだった。例えば、フラッシュやディスクといった性能が異なる各ドライブに、それぞれどの程度の容量を割り当てるかを検討する必要がある。高速なフラッシュに大きな容量を割り当てれば性能を確保しやすい半面、コストが相応に上昇する。統合する他のシステムとのバランスも考慮して設計しなければならない。

 このため、専門知識を身に付けたITエンジニアが各システムに必要なリソースを詳しく検討し、見積もる必要があった。設定作業にも時間が掛かりやすく、「一度設定したら極力変更しないことがセオリーだった」(EMCジャパン システムズ エンジニアリング本部 プロダクト ソリューション統括部 エンタープライズ & ミッドレンジストレージ部 部長 峰松正和氏)。

 このような事情から、「新規事業のために高速なストレージを短期間で用意してほしい」などと利用部門の担当者が要望しても、ストレージ担当のITエンジニアが直ちに応じることは難しかった(図1)。

図1●統合ストレージ基盤を運用する企業で性能確保の課題が浮上
図1●統合ストレージ基盤を運用する企業で性能確保の課題が浮上
データの負荷パターンが異なるシステムを同一のストレージ基盤に統合すると、それぞれに必要な性能を確保する作業が複雑になりやすい。利用部門からのストレージに対する要望に迅速に応じられない
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