インターネットの勃興は今からわずか20年弱前のことに過ぎない。筆者がノークリサーチを立ち上げてから16年が経過しているが、1998年頃の日経産業新聞には、連日、企業のホームページ開設情報が掲載されていた。それほどIT業界は発展途上だった。
今回取り上げるのは、その当時からインターネットサービスプロバイダー(ISP)事業を手掛けてきたインターネットイニシアティブ(IIJ、アイアイジェー)だ。企業のインターネット利用に欠かせないバックボーン回線を有するキャリア系を除けば、最大規模のISP専業がIIJであった。そして現在、同社は国内のクラウドベンダーとしては最有力の存在となっている。
ここに至る同社の軌跡と、国内のクラウド市場の変遷は見事にシンクロしていることが分かる。では詳細にご紹介することにする。
2009年、IIJ GIO発表でクラウド事業へ本格参入
クラウドが一般に認知されるようになる前は、「インターネット」が当時のネットワーク前提のIT市場のキーワードであった。IIJは企業のインターネット利用に欠かせない役割を持つベンダーとして、大企業を中心に認知されてきた。オンプレミスからクラウドへとトレンドがシフトするなかで、同社もクラウド事業を徐々に強化してきた。
まずは同社のクラウド事業の沿革を見てみよう。
2000年にIIJが提供を開始した「IBPS」は、サーバー、ストレージ、ネットワークといったITリソースを、必要な時に必要なだけ提供するというサービスであった。ユーザーの初期投資を抑え、構築期間を大幅に短縮した。IBPS専任のエンジニアが運用にあたっていた。このIBPSで培った技術を活かし、全レイヤーに守備範囲を広げたのが、2009年10月5日に発表したサービス、IIJ GIO (ジオ)である。提供開始は同年11月である。
世界5極体制のクラウドネットワーク
IIJのクラウド関連サービスはすべて、「IIJ GIO」のブランド名を冠している。IIJと、その子会社のIIJテクノロジー(2010年4月1日にIIJが吸収合併)がリソースを出し合って共同開発した。ちなみにGIOとは、Grand IT On-demandの略であり、国内最大級のバックボーン上にあるITリソースをオンデマンドで提供するという意味を持たせている。