クラウドは「ユーザー企業がIT資産を自ら所有する必要がない」点が、中堅・中小企業のIT活用を大きく変革するものとして注目を集めてきた。昨今ではユーザー企業の理解も進み、クラウドへの抵抗感もだいぶ薄れてきた感がある。しかし、クラウドが登場した当初にユーザー企業が抱いた期待(中には現実とはややかい離したものもある)が、更なる普及を妨げている側面も少なからずある。
そこで、本稿ではユーザー企業がクラウドをどう捉えているかを調査した最新の結果を踏まえて、ユーザー企業が抱くクラウドへの期待と現実とのギャップをどう埋めていくべきかを考えていくことにする。
「思ったより安くならない」「セキュリティが不安」の背後には
まずは最新の状況を見てみよう。以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業(IT企業は除く)に対し、「IT活用提案の中にクラウドというキーワードが含まれていた場合に抱く印象」を尋ねた結果だ。クラウドにはSaaS、IaaS/PaaSなど様々なものがあるが、今回の主な目的は「クラウド」というキーワードがユーザー企業に与える印象を測ることなので、特に区別していない。
上の棒グラフ中、青で示したものはポジティブな印象の項目、赤で示したものはネガティブな印象の項目である。ポジティブな印象として最も多く挙げられたのは「社外からのアクセスが可能になる」こと。一方、セキュリティや価格については赤の項目の比率が高く、ネガティブな印象が比較的強いことが読み取れる。
もちろん、これはあくまで「印象」であり、実際にクラウド活用を実践/検討した結果とは異なる点に注意が必要だ。以下ではセキュリティと価格のそれぞれについて、もう一段深く考察していくことにする。