最近、ユーザー企業の方から「ITはお金がかかる割に役に立たない」といった意見を耳にすることが少なくない。
確かにここ数年、OSのサポート終了、消費税率改正、マイナンバー対応など、ビジネスに直接寄与せず、かと言って避けることもできないIT支出が続いている。そのうえ、ユーザー企業が手軽に導入でき、業績アップにつながるようなITソリューションは、それほど多くない。こう考えてくると、IT活用への期待が薄れるのも無理のないことと言える。
その一方で、ITを活かしてビジネス拡大に成功している企業が存在するのも事実だ。こうしたユーザー企業では、いったい何が違うのだろうか。もっぱら現状維持のためのIT活用から脱し、新たな一歩を踏み出すには何が必要なのか。
実は、クラウドサービスの一種であるPaaSの活用動向調査で、この疑問の答えにつながる示唆が得られた。そこで今回は、上記の調査データを読み解きながら、ビジネスとITの連動性について考えていくことにする。
儲かっているからIT投資するのか、IT投資するから儲かるのか?
下のグラフは年商500億円未満の企業を対象に、「(直近の)経常利益の増減」(2016年7月時点の経常利益を2016年4月時点と比較)と「(直近の)IT投資の予定」(2016年7月以降のIT投資を2016年4月時点と比較)を尋ね、それらの関係をプロットしたものである。
IT投資が減少すると回答した企業(「IT投資:減少」)では、経常利益が減少した(「経常利益:減少」)割合が高く、逆に「IT投資:増加」の企業では「経常利益:増加」の割合が高いことが分かる。
だが、この結果を元に「IT活用は業績改善に有効である」と断言することはできない。「経常利益:増加」かつ「IT投資:増加」と答えた企業のなかには、「IT投資によって業績が改善し、さらに今後もIT投資を継続しようとしている」ケースもあれば、「業績が改善したので、延期になっていたIT機器の入れ替えや業務システムのバージョンアップを再開した」というケースもあると考えられるからだ。