企業がIT関連の支出を行う理由や背景は実に様々だが、以下のいずれかに大別することができる。

1. 自社のための戦略投資(販路の拡大など)
2. 各種の法制度への対応(消費税率改正など)
3. IT自体に起因する要因(OSサポート終了など)

 賢いIT投資を実現するには、自社を取り巻く上記1~3の現状を把握し、適切な判断を下していかなければならない。今回は中堅・中小企業のIT投資意向に関する最新の調査結果を踏まえ、この点について考えていくことにする。

景気が悪くても「IT投資を増やす」企業はゼロにはならない

 まずは、直近の調査データを確認しておこう。ノークリサーチでは四半期ごと(1月/4月/7月/10月)に、年商500億円未満の民間企業を対象としたIT投資意向の定点調査を実施している。この調査では毎回必ず、当四半期以降のIT投資予算額が直前の四半期に比べてどれだけ増減するか、そしてその理由を尋ねている。

 以下のグラフは、2016年4月以降のIT投資額の前四半期(2016年1~3月)に比べた増減を尋ねた結果である。年商別にプロットしてある(以下、このグラフを「IT投資の増減グラフ」と呼ぶことにする)。

図●2016年4月以降のIT投資額の増減(2016年1~3月との比較)
図●2016年4月以降のIT投資額の増減(2016年1~3月との比較)
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 年商規模との兼ね合いを見ると、年商規模が大きくなるにつれて「増やす」の割合が高くなり、逆に小さくなるにつれて「減らす」の割合が高くなっている。一般的に年商規模が大きくなればIT関連に割くことのできる費用も増えてくるので、ある意味当然の結果と言える。だが、四半期単位の変化で見た場合には常にこのような傾向になるとは限らず、特定の年商帯でIT投資意向が一時的に高くなったり、低くなったりすることもある。

 ここで理解しておくべき点は「景気が悪い」というニュースが流れる中でも、全ての企業がIT投資を減らすわけではないということだ。もちろん景気動向は大切だが、自社の将来に向けて今やっておくべきと考えるIT投資があれば、それに敢えて取り組むといった選択が正解となることもある。

 さらに、「(IT投資は)増加」と回答した企業と、「(IT投資は)減少」と回答した企業にその理由をそれぞれ尋ね、回答割合の高かった上位5項目をプロットしたものが以下の2つのグラフである(IT投資の増減を最も大きく左右する、売り上げの増減については、以下のグラフでは割愛した)。以降、前者を「IT投資増加理由グラフ」、後者を「IT投資減少理由グラフ」と呼ぶことにする)。

図●2016年4月以降のIT投資額を増やす理由(複数回答)
図●2016年4月以降のIT投資額を増やす理由(複数回答)
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図● 2016年4月以降のIT投資額が減る理由(複数回答)
図● 2016年4月以降のIT投資額が減る理由(複数回答)
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 以下ではこれら3つの調査データを参照しながら、冒頭に挙げたIT関連支出に繋がる3つの要因についての最新の動きと、今後留意すべき点を考えていくことにする。

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