企業にとってITはあくまで道具であり、何らかの課題を解決するための手段である。しかし、「ITがもたらすメリット」と「企業が抱える課題」の間には依然として少なからぬギャップが存在する。このギャップをどう解消するかという難題への最新の取り組みの一つが、中小企業庁が各都道府県に一カ所ずつ開設している「よろず支援拠点」である。今回は事例取材も交えつつ、経営課題とIT活用のギャップを埋める手がかりを探っていくことにする。

IT活用の前に、まず自社の現状や課題を把握しておくことが大切

 まずは定量的な調査データを元に現状を俯瞰しておこう。以下のグラフは年商500億円未満の企業に「IT投資額が増えるために必要な事柄は何か?」を尋ねた結果である。

図●「IT投資額が増えるために必要な事柄は何か?」(年商500億円未満の企業、複数回答)
図●「IT投資額が増えるために必要な事柄は何か?」(年商500億円未満の企業、複数回答)
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 「売上増加やコスト削減に直結するIT活用のアドバイス」が多く挙がった一方で、「ITと経営の橋渡しを行う外部人材の登用」は1割未満に留まっている。ITによって売上増やコスト削減を実現するためには、まず経営の観点から自社の現状や課題をしっかり把握することが必要なはずだ。だが、そのプロセスが抜けてしまうことも少なくない。上記のグラフはそうした現状を反映したものとみることもできるだろう。

経営課題解決のワンストップサービスを担う「よろず支援拠点」

 とはいえ、自社の現状や課題を把握することは容易ではない。そこで、第三者が客観的な視点から支援しようとする取り組みが「よろず支援拠点」だ。融資相談や人材採用など、個々の課題に関する相談窓口は以前から数多く存在するが、「何が課題なのか?」を共に探り、適切な支援者を紹介してもらえる機会は少なかった。「よろず支援拠点」が提供するのは、そうした企業経営に関する「ワンストップサービス」といえる。

 「よろず支援拠点」の支援対象は中小企業や小規模事業者である。しかし、サプライチェーンや消費動向を考えれば、これらの企業が健全であることは大企業にとっても重要だ。また、大企業であっても、部門単位での活動という観点で参考となる点も多いだろう。

 そこで、今回は「東京都よろず支援拠点」でコーディネータとして活躍する中小企業診断士の金綱潤氏、同じくサブコーディネータとして日々多くの企業の支援にあたる中小企業診断士の大庭聖司氏に、具体的な取り組み事例を交えてお話を伺った。

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