ERP(統合業務)ソフトは、ERP以前の専門システムの組合せからオンプレミス(自社運用)かつ密結合型の従来型ERP、さらにクラウド連携型のポストモダンERPへと進化した。例えば欧州SAPの最新ERPソフト「SAP Business Suite 4 SAP HANA」の目指している姿は、ポストモダンERPの一種。従来のERPがそれ自身でフル機能を統合したスイート製品であるのに対して、ポストモダンERPは周辺アプリケーションと連携するスタイルを取り入れている。

 現在、老朽化しつつある従来のERPを使っている私たちは、どのようにERPを刷新していけばよいのか。その一つの答えが、複数アプリケーションを連携させるポストモダンERPだ。個々のシステムの開発においては、あまり変化しないERPのコア機能(例えば財務会計)や、変化が激しい周辺アプリケーション(例えば最新の人材管理・分析機能を提供するタレントマネジメント)など、システムごとの特性に合わせて開発/導入のスタンスを適切に選択することも重要になる。

 以下では、(1)企業のERPシステムが抱える現状の課題、(2)ERPの進化、(3)ERPに対して企業が取るべき施策---の三つを説明する。

コストパフォーマンスへの不満が大きく、安定運用には満足

 企業がERPに対して抱えている課題を明らかにするため、ガートナーが2014年11月に実施したアンケート調査を基に、ERPに対する意識紹介する。ERPのコストパフォーマンスやサポートの対応など12項目について、日本のユーザー企業(324社)が現在使っているERPについて満足か不満かを回答した。

 最も不満が大きい項目は「コストパフォーマンス」だった。ERPに投資した金額に見合った効果が必ずしも得られていない、という評価だ。また、「カスタマイズ性」についても不満が大きかった。これは単にカスタマイズができるかできないかという視点ではなく、カスタマイズによって維持費用が膨らむ、といった要素も含んでいるとみられる。

 「テクノロジーの革新性」も満足度が低い項目だ。企業によっては十数年以上前に導入した製品を使っており、全般に機能や操作性が古臭くなっており、昨今進んでいるクラウドやモバイル、アナリティクスなどの新興トレンドへの対応が図られていないことへの不満だろう。この一方で、「安定的なシステム運用」や「全般的な機能性」「サポートの対応」など、ERPが従来から強みとしてきた項目については、一定の満足度が示されている。

カスタマイズから脱却、サービス連携型のERPへと進化

 グローバルでの米ガートナーの予測では、2016年までに大量のカスタマイズが施されたERP実装は、「レガシーERP」と呼ばれることが普通になる。今後は、過度なカスタマイズをすることなく、なるべく標準機能のまま、または用意された設定変更だけでERPを利用するよう努める企業が増えていくだろう。すでに、SaaS型のERPは設定変更だけで使うようになっている。

 日本のガートナーの予測では、2018年までに、ERPを利用している大企業の30%が、保守コストを抑制するために、他のERPへの乗り換えや第三者保守ベンダーへの移行を試みる。第三者保守ベンダーとして、米リミニストリート(Rimini Street)などが台頭してきている。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。