ビジネスの成長が鈍化した現在、企業にはITコストを最適化する需要が高まっている。このためにはまず、ITコストを「見える化」しなければならない。今回は、ITコストを見える化するために企業がすべきことを解説する。

 ITコストを見える化する際には、ほとんどのユーザーに共通する課題がある(図1)。ここに述べたのは、実際にユーザーからガートナーに問い合わせがある課題ばかりだ。課題の多くは、現地子会社にIT投資を一任してきたグローバル企業はもちろんのこと、国内だけでビジネスを展開している企業の多くにも当てはまる。

図1●ITコストを見える化するために取り組むべき8つのテーマ
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図1●ITコストを見える化するために取り組むべき8つのテーマ

まずはIT組織構造を分散型から連邦型に移行せよ

 ITコストを見える化するための最初の一手は、IT組織の構造を変えることだ。現状、IT組織は大きく三つのタイプに分かれる(図2)。(a)集権型(中央IT部門がすべてを集中管理)、(b)連邦型(共通システムやインフラは中央IT部門が管理)、(c)分散型(子会社に任せる)----である。

 企業が成長し続けている場合は、(c)の分散型でもよかった。実際に、成長していたグローバル企業の多くが分散型となっていた。

 しかし、利益が出せなくなってくると、コストを最適化する需要が生まれる。こうした背景から、最近では(b)の連邦型を採用する企業が増えてきた。

図2●ITコストの見える化に向けた最初の一手はIT組織構造の改善
図2●ITコストの見える化に向けた最初の一手はIT組織構造の改善
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 分散型は、意思決定や行動のスピードが速いことがメリットだが、機能が重複してしまうのでコストが高くつく。一方で集権型はコストが安く済むことがメリットだが、スピードや事業ニーズの面で劣る。そこで、共通インフラと共通アプリケーションだけをIT部門が管理して、個別のアプリケーションを各社に任せる連邦型が生まれた。

 ただしIT組織を連邦型にするだけでは、ITコストの見える化は実現できない。例えば、子会社各社のITコストを比較する際に、ITコストに含めるIT(機器やシステム)の対象がそれぞれ異なっていたら、比較のしようがないからだ。

「何をITコストに含めるのか」を会社ごとに統一せよ

 ガートナーは2015年5月、ユーザー企業を対象に「ITコストに含めるIT(機器やシステム)の対象は何か」を調査した。基準がバラバラだと、ITコストを比較できなくなるからだ。

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