欧州SAPや米Oracleといった“メガベンダー”が提供するパッケージ型の業務ソフトを使うユーザー企業が増えてきている。日本のユーザー企業は従来、外部のSIベンダー(システム構築会社)に自社固有の業務システムを開発させてきたが、近年ではパッケージソフトを購入して使いこなす形態も一般的になりつつある。

 ただし、パッケージソフトを使うに当たっては、ソフトウエアのライセンス契約など、注意すべきポイントがいくつかある。事実として、ガートナーの元にも、メガベンダーとのライセンス契約に関する問い合わせが増えてきた。

 ガートナーでは、メガベンダーとの交渉ポイントをまとめたフレームワーク「T4」を用意している。頭文字を取った四つの「T」で成り立つ。(1)「タクティクス」(戦略)、(2)「テンプレート」(契約形式)、(3)「タームス&コンディションズ」(契約条件)、(4)「タイミング」(時期)、である。これらが、交渉における4大キーポイントとなる。

2~3社を候補に挙げてベンダー間の価格競争を引き出す

 (1)のタクティクス(戦略)とは、メガベンダーとの交渉を優位に運ぶための環境整備をいう。これはベンダー同士が競争する環境を整えた上で交渉するということである。

 具体的には、2~3社の候補を残して比較検討している姿勢を見せることが重要になる。グローバル全体の傾向として、2~3社の候補を残し交渉した企業は、始めから1社のみに決めて交渉した企業よりも、5~10%のコスト削減を実現している。

 すでに交渉相手のベンダー製品に決めていることがベンダーに伝わってしまったら、好条件を引き出すことは難しくなる。ベンダーから見れば、ライバルがいない商談は簡単であり、大きく値引きするといった譲歩が不要になる。

 ユーザーは、仮に交渉相手のベンダー製品を導入する可能性が高いとしても、他の選択肢を安易に排除せず、最終段階まで検討する姿勢を示すことが望ましい。

 複数ベンダーの製品を組み合わせる導入方法もある。現在では、“ポストモダンERP”と呼ぶ、コアERPの周囲に複数のクラウドアプリケーションを組み合わせたスタイルが主流になりつつある。かつてのように、一枚岩のスイート製品によって全機能をまかなうスタイルは古くなりつつある。

 ポストモダンERPでは、例えば、ERPの基本機能群を中心に据えつつ、CRM(顧客関係管理)、SCM(サプライチェーン管理)、HCM(人材管理)といった周辺業務のアプリケーションを、複数のベンダー製品の中から自由に組み合わせる。

ライセンスの種類やサポートの種類を調べて、適切なものを選ぶ

 (2)のテンプレート(契約形式)は、ライセンスの種類やサポートメニューなどの、契約の形式を指している。例えばライセンスの場合、ユーザー単位のライセンスやデバイス単位のライセンスなどがあるほか、永久ライセンスや期限付きライセンスなどライセンスの期間の違いもある。

 SIベンダーを介してメガベンダーのアプリケーションを導入する場合、ライセンスやサポートの形式が、決めうちになる場合もある。SIベンダーは、ユーザーライセンスかつ永久ライセンスでの契約を提案しがちである。サポートについても、「SAP Enterprise Support」(欧州SAP製品の場合)のように、サービスレベルと金額が高いものが提案されることが一般的である。

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