モバイルコンピューティングが企業に浸透しつつある。ガートナーが2015年5月に実施した調査によると、日本企業の51.1%がスマートフォンを、54.8%がタブレットを利用している。従業員数が2000人以上の企業に限れば、59.7%がスマートフォンを、75.8%がタブレットを利用している。

 もっとも、企業の中で見ると、モバイル端末を利用している社員の割合は高くない。7~8割の企業は、社員の3割未満しかモバイル端末を利用していない。ところがモバイル端末を利用している部署・部門を見ると、興味深いことが分かる。1位の営業部門と3位の情報システム部門は妥当だが、2位に経営層が入るのだ。

 これまでのIT技術で、経営層が利用部門の上位に食い込むことはなかった。これがモバイルコンピューティングの特徴と言える。モバイル端末はメールとスケジュール管理の用途では中心となりつつあり、必ずしもこれらの用途でパソコンは必要ない。最近では顧客サービスや保守サポートなどの現場にも広がってきている。

図1●企業におけるモバイル端末の用途を調査した
図1●企業におけるモバイル端末の用途を調査した
スマートフォンはメールとスケジュール管理が主であり、タブレットには対顧客のプレゼンテーションや会議端末としての用途が加わる。パソコンよりも簡単に情報を参照できることから、モバイル端末は経営層に使われている
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 ガートナーでは、企業のモバイル端末の利用用途を調査した(図1)。スマートフォンはメールとスケジュール管理が主となる。タブレットの用途は広く、対顧客のプレゼンテーションなど営業ツールとして最も使われている。会議の資料を閲覧する情報共有端末としての用途も目立つ。出席者全員に資料を印刷して配る必要がなくなり、利用者は端末上で資料を拡大して見られる。

 モバイルコンピューティングは、ガートナーのハイプサイクルでは「幻滅期」に位置する。注目を浴びて導入されてきた時代を通り越して、現在では「効果はどうなのか、本当に必要としている部署はどこなのか」という議論が始まっている。企業がモバイルコンピューティングを活用してビジネスに貢献させられるかどうかは、これからの取り組みにかかっている。

 モバイルコンピューティングが普及した環境要因に、ビジネスやワークスタイルの変化がある。ビジネス面では、これまで何年もかけて開発してきたサービスが、たった数日で提供できるようになってきた。新しいビジネスモデルを作り上げた例もある。顧客との関係も変わってきた。以前は、顧客からの問い合わせには帰社後に改めてメールで回答するといったスタイルだったが、現在ではモバイル端末を使ってその場で回答し、情報提供までを済ませられるのが常識となってきた。

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