ITサービス市場、すなわち、システム運用のアウトソーシングサービスやアプリケーション開発サービスといった、ITベンダーがユーザー企業に提供しているサービス商材の需要が変化している。背景には、クラウドサービスへの移行にともなうセキュリティ需要の高まりや、オンプレミス資産の老朽化といった事情がある。
日本のITサービス市場の規模は年間1200億ドルと巨大であり、北米と西欧に次ぐ3番めの規模である。ただしITサービス市場の年平均成長率は、2014年から2019年にかけて2%と著しく低い。北米や西欧の成長率は4%前後と新興国よりも低いが、日本は特別に低い。
直近の2015年における日本のITサービス市場をセグメント別で見てみると、アプリケーション関連のITサービスは全般的に伸びている(図)。上流のコンサルティングは6.1%と高い成長を遂げており、SaaSやパッケージアプリケーションの運用サービスも6.5%と急伸している。
同じ運用サービスでも、オンプレミスのインフラを中心とした運用管理サービスの成長率は1.9%にとどまる。BPO(業務プロセスのアウトソーシング)も1.7%と低い。以前からあるアウトソーシングのサービスは伸びが鈍化している格好で、ハードウエアの保守サポートに至ってはマイナス1.3%と市場規模が縮小している。
企業規模が小さいほどセキュリティの課題を抱えている
ガートナーは2016年5月に、ITサービスのうち運用管理分野にフォーカスしてユーザー調査を実施した。「ITインフラストラクチャの導入/保守/運用管理」について「現在優先すべき課題」の上位三つと、3~4年後を見据えた「今後優先すべき課題」の上位三つを回答してもらったのだ。集計してみると1000人以上の大企業と1000人未満の中小企業とで、課題に違いがあった。