IT投資の意思決定では案件ごとに優先順位を付けることが不可欠だ。そのためには「リスク」「効果」「コスト」の三つの要因から投資すべきか否かを判断する。
例えば、コストが大きい案件群や小さい案件群のそれぞれについて、効果を横軸(効果大が右、効果小が左)に、リスクを縦軸(リスク小が上、リスク大が下)に取った4象限で考える。ここで効果が高いがリスクも大きい場合(右下の象限)は見直しが必要だ。リスクは小さいが効果も低い場合(左上の証言)は後回しにするか却下する。
ではリスク、効果、コストは、どのような視点に立って調べればよいのか。さらに、そもそもの大前提として、開発しようとしているシステムが経営目標に沿っているかどうかを、どう担保すればよいのか。ガートナーでは、IT投資案件を評価審議会にかける際に必要な申請書の項目をまとめた(表)。
システム開発案件の立ち上げに当たって何よりも重要なポイントは、投資に対する効果に責任を持つ「システムオーナー」を決めること。このシステムオーナーは必ずしも業務部門に限らない。組織横断的な案件は企画部門が、インフラ整備などの非機能案件はIT部門が、効果に対する説明責任を持つ。
ITシステムは中期経営計画実現のための個別施策の一つにすぎない
システム案件が中期的な経営目標に沿っていることも大切だ。IT戦略だけで考えてはならず、そのIT投資が経営戦略の目標を実現するために必要であることを説明しなければならない。にもかかわらず、日本の企業は経営戦略から独立させてIT投資を単独で評価する傾向にある。
実際にガートナーが実施したアンケート調査では、日本ではIT投資を戦略プロジェクト投資の一部として捉える比率が21%と小さかった。残りの79%はITを独立したプロジェクト投資と捉え、単独で評価していた。これに対してワールドワイドでは、過半数の60%がITを戦略プロジェクト投資の一部として捉えていた。