前回は、BI(ビジネス・インテリジェンス)の世界で起こっている変化として、データ・ディスカバリーと呼ぶ、業務部門のエンドユーザーがアドホックにデータを分析できる新機能について触れた。第2回の今回は、変化への具体的な対応方法を解説する。
一般に、業務アプリケーションはしっかりと時間をかけて開発するものだ。ユーザー部門へのヒアリングを経てシステムの要件を定義し、これを構築し運用する。不具合が出ないように品質を保つことや、納期を守ることも求められる。これが、従来の典型的な考え方だ。
この一方で、モバイルやソーシャルなどのデジタル技術をビジネスに活用する新しい時代が始まっている。こうしたデジタル技術に依存したビジネスの世界では、要件定義や高い品質の維持は、必ずしも重視されない。要件を定義することは困難で、システムには完璧さよりも迅速さが求められるからだ。
BIも同じだ。従来の典型的なBIは、過去の実績を一定の切り口で確認するという帳票的な使い方が主だった。従来型のBIツールは、このような要件を満たす上で、一定の成果をあげてきた。ところが新しいビジネスに取り組むときには、そもそもデータ分析の要件を定義することが困難になる。加えて、ソーシャル・メディアやWebのログなど、非構造化データを分析対象として扱いたいという思いが強くなるなど、分析対象のデータも多様化する。このようなニーズに対応する上で、データ・ディスカバリー型のBIによる、アドホックなデータ分析が必要になる。
従来型BIとデータ・ディスカバリーが共存、用途に応じて使い分け
もちろんビジネスの多くを推進する上で、定型レポートやダッシュボードのような従来型のBIも引き続き必要になる。これらを維持しつつ、データ・ディスカバリー型のBIを導入してデジタル時代に対応する。この二つの種類のBIを共存させる考え方としてガートナーでは、「ペース・レイヤー」という考え方を利用することを提案している。
ペース・レイヤーとは、物事の変化のペースに応じてアプリケーションを階層化する手法だ。システムを変更する頻度に応じて、「記録システム」、「差別化システム」、「革新システム」の3階層に分かれる。ここに、それぞれのデータ分析手法を当てはめて考えると分かりやすい(図)。