現在、ITの世界には、大きな変化が起こっている。この変化について、ガートナーでは、「デジタル・ビジネス」(テクノロジーにより変革される新たなビジネス)や、「Nexus of Forces」(クラウド、モバイル、ソーシャル、インフォメーションという4つの力を融合する考え方)といった観点でとらえており、それぞれ今後のITだけでなくビジネスそのものを根本から変える重要なテーマであると考えている。

 IoT(Internet of Things)はもとより、人工知能やウエアラブルなど、現実にビジネスにイノベーションを起こせる、新しいデジタル・テクノロジーも次々に登場してきている。

 この変化を、ユーザー企業のIT部門は、どう捉えればよいのだろうか。

 一言で言えば、「すべてが再定義されるべき話」と、とらえるべきだ。ユーザー企業のIT部門、場合によってはビジネス部門も、この変化を直視し、変化に対応する「覚悟」を決めなければならない。

 この変化は、一過性の変化ではなく、「不連続点」ととらえるべきだ。テクノロジーのパワーが、あるしきい値を超えて、これまでできなかった、いろんなことができるようになった。将来から今を振り返ると、今は「新たなITによる産業革命」の時代に入っていると呼ばれる可能性は高くなってきている。

 米GEやアマゾンなどの革新的な企業は、すでに、覚悟を決めて変化をリードすることで、競争優位性を確実にしている。一方、ほとんどの企業は、変化をリードするどころか、まだ“受け身”だが、もはやそんな状況ではない。

「テクノロジー中心」と「ユーザーファースト」でITインフラを構築する

 ITインフラも、当然、再定義する必要がある。これまでITインフラは、「業務の維持」のためのインフラだった。これからのITインフラは、ビジネスの成長と革新のためのインフラであるべきだ。

 業務の維持が目的だったため、これまでは、業務に合わせてITインフラを設計していた。いわば、「業務中心」だったのだが、これからは、テクノロジーを前提にインフラを設計する「テクノロジー中心」と最終のエンドユーザー(消費者、生活者)を前提とした「ユーザーファースト」に変えていくべきだ。モバイルやクラウドが当たり前になった今、テクノロジーにより顧客満足度を最大化することがこれからのビジネスには不可欠となる。こうした企業の典型が、アマゾンだ。

 企業は、目を覚まさないとまずい。インフラのあり方そのものが、抜本的に変わる。「では、何をすればいいのか?」を真剣に考えて、覚悟を決めて、やりきるべきだ。

新しい考え方を理解する

 ITインフラに新しいテクノロジーを導入する際に、よくある議論が、スモールスタート。いきなり大きなことはできないので、それはきっかけとしてはあり得るシナリオだ。しかし、それだけでは、限界がすぐに来る。

 新しいテクノロジーを導入するときは、「新しい考え方」をしっかりと頭に入れなければならない。そこから始めないといけない。これは、非常に大事なことだ。「昔ながらの考え方」のままでは、失敗する。

 例えば、昔ながらの考え方のままで、DevOpsを形だけ導入している企業がある。「それはDevOpsではないでしょう」と言わざるを得ないものも出てきていることは注意が必要だ。

 最近は、Dockerが注目を集めているが、これも、昔ながらの考え方との比較で理解しようとすると、本質が分からなくなる。Dockerは、単なるサーバー仮想化の置き換えではない。小さい粒度の何万というコンテナ(マイクロサービス)が一気に立ち上がる世界(WebスケールIT)を可能にする、従来技術とは根本から違うテクノロジーなのだ。こうした新しい考え方を、きちんと理解する必要がある。

 余談であるが、最近、家電などで「人工知能搭載」といった記述があったり、ベンダーで、人工知能など当たり前にやっているという人がいるが、これはほとんどのケースで疑ってよい。こういうことを語る人は、これまでの「マイコン」を人工知能と言っているに過ぎない可能性があるため十分注意が必要である。

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