2014年から、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)への関心が非常に高い。ガートナーへのIoTに関する問い合わせも、継続的に来ている。
IoTは、新しいテクノロジーとして、IT関係者がまず注目したが、最近は、一般のビジネスパーソンにも関心が広がっている。ガートナーでは、以前から「すべての企業がテクノロジーカンパニーになる」と言っているが、IoTはその代表的なテクノロジートレンドと言える。
2014年10月に、IT部門のリーダーを対象にグローバルで実施した調査では、「IoTはビジネスにインパクトをもたらすか」という質問に、約4割の人が「3年以内に自社のビジネスに影響が及ぶ」と答えた。2015年3月に国内で実施した調査でも、やはり40~50%の企業が「自社のビジネスに影響が及ぶ」と答えている。多くの人が「IoTにより、ビジネスにインパクトをもたらすような何かが起こる」と認識しているのだ。
IoTを活用した課金で、所有から利用への流れが強まる
では「何が起こる」のか。「すべてがつながる」という非常にシンプルなアイデアだが、実際に自分たちのビジネスに関連して「何が起こるのか」を想像するのは、その可能性が広範囲にわたるので、どこから手を付けるべきかの判断が難しい。この点で、みなさん、悩んでいる。
IoTで何が起こるのか、言い換えれば、IoTがビジネスにもたらす価値は、大きく4つある、とガートナーでは考えている(図)。
1つめは、Optimize(様々なプロセスの最適化)である。生産やサービス提供のプロセスをIoTで最適化する。これは、既存ビジネスの効率化が主な目的であり、採用を検討する機会もそこら中にあるはずだ。
この例としては、日本航空(JAL)と野村総合研究所(NRI)による、iBeaconを活用した実証実験が挙げられる。搭乗ゲートに設置されたビーコンの信号をスタッフが持つスマートフォンで受信することで、担当者がスタッフの所在・配置状況を遠隔地からリアルタイムに把握できるようにする。これにより、顧客へのスピーディーな対応と、より効率的なスタッフの配置が可能になる。
2つめは、Charge(新しい課金の在り方)だ。IoTのテクノロジーを活用すれば、センサーの情報に基づく課金が可能になる。この課金方法が普及すれば、商品を買ってもらうというビジネスが、使ってもらって課金するというビジネスに変わってくる可能性がある。すなわち、顧客にとっては所有から利用への選択肢への移行ということである。
既にIT業界では、所有(オンプレミス)から利用(クラウド)へ、という流れが強まっているが、IoTを活用した課金が広まれば、一般的な製品に関しても、「所有」から「利用」への流れが強まる可能性があり、例えば、製造業にとっては、従来のビジネスモデルを根本的に変える可能性を秘めていると言える。
他にも面白い例としては、金融業界の例として、海外でも提供が始まっている「テレマティクス保険」がある。これは、センサーで自動車のデータを収集し、運転特性に合わせて保険料を算出する自動車保険のことだ。日本でも、ソニー損保が、このタイプの保険(「やさしい運転キャッシュバック型」)を販売している。ただし、自動車から得られるデータを直接利用するのか、あるいは専用のセンサーをアドオンで設置するのかなどの違いもあるなど、それぞれの国などでのアプローチの違いも出ている。