2017年の現在、オープンソース(OSS)がもてはやされている。以前は、OSSと聞いてもLAMP(Linux/Apache/MySQL/Perl、PHP、Python)などを連想するだけだったが、現在は主にクラウド領域でOpenStackやDockerなどが大きな盛り上がりを見せている。
OSSがもてはやされるようになった最大の理由は、現在のビジネス環境がOSSを求めているからだ。現在のビジネスは、ITシステムにスケール(拡張性)、多様性、スピードの三つを求める。しかし、従来型のIT環境では、これらニーズに応えられない。新規ビジネスを2年かけてサービスインしていたら動きの速い企業に先を越されてしまう。
これに対して、OSSは新規ビジネスに適した特徴がある(図1)。スケールに対しては、OSSには膨大なコミュニティーがあり、たくさんのソースコードやプロジェクトが存在している。多様性については、個々のOSSは小さなツールであるため、これらを組み合わせて目的を達成できる。スピードについては、コンポーネントとして再利用しやすいところが向いている。
ガートナーでは、デジタル・ビジネスを支える技術のトレンドとして、SDE(ソフトウエア定義型の環境)や統合システム、高度なアナリティクスなどを挙げている。こうした新興領域は既にOSS無しでは語れなくなっており、実際にOSSが牽引している。ビジネス上のニーズがあることから、OSSの良さに誰もが気付き始めた。
日本のモノ作りは、高品質で高信頼であることを重視してきた。しかし、グローバル競争の世界は、スケールとスピードが要となって、次々に新しいサービスが生み出されている。Amazonなどの先進企業が、既存のビジネスの枠組みを次々と破壊している。OSSはこうした変化に適するのだ。
IBMやOracle、Microsoftといった大手主要ITベンダーも特に新興領域でOSSへの注力を強めている。OSSを敵とは見なしておらず、OSSありきでビジネスが動いている。例えば、以前はLinuxと敵対しているイメージが強かったMicrosoftは、クラウドサービスのAzure上でLinuxを使ってもらおうと「Microsoft Loves Linux」というメッセージを打ち出したほどだ。