FinTechの波が押し寄せ、世界中の金融機関が変革の必要性に迫られている。IT支出に巨額を投じる金融業界の変化は、インテルにとっても人ごとではない。金融業界を担当するMike Blalock ゼネラルマネジャーは、金融機関はデジタルシフトを加速させるために、ITインフラのアップデートが必要との認識を示し、「インテルは信頼できるアドバイザーになれる」と語る。
世界の金融機関が置かれている現状をどう見ているか。
金融業界は今、変革の渦の中心に立っていると言えるだろう。シェアリングエコノミーやミレニアル世代(2000年以降に成人となった世代)の台頭がもたらす破壊的変化にうまく対応するため、技術投資を加速させている。金融業界は元々IT支出の規模が大きく、世界全体の18~20%を占めている。しかも支出額は伸びている。当社にチャンスを提供してくれる市場であることは間違いない。
長期的な変革を見据えると、三つの領域が注目に値する。まずは、分散型テクノロジーを使ったブロックチェーンだ。決済の方法を大きく変え、これまで見えにくかったバックエンドの仕組みに透明性をもたらすものだ。イングランド銀行はブロックチェーンを“金融のインターネット”と呼び、インターネットの登場以来、金融業界に最も強い影響を及ぼす可能性がある。
ただしブロックチェーンは新しい技術。スケーラビリティやセキュリティの課題が依然として存在している。当社は新しいソリューションを開発すると共に、パートナーと一緒になって規格標準を策定する作業も進めている。
米R3 CEVは、世界の金融機関と一緒にブロックチェーン上での様々なソリューションを評価し、いかに実装するかを検討している。業界のプレーヤーをまとめるという点でうまくやっていると思う。当社は、R3 CEVが主催するコンソーシアムの主要メンバーとも作業し、規格標準づくりを加速させるつもりだ。
次に注目すべきは、スタートアップ企業のエコシステムを活用し、金融サービスの世界にイノベーションを生み出そうとするFinTechの動きだ。米国でも他の国々でも、多くのFinTech企業は、特定領域でのサービス提供にフォーカスして力をつける。そこで金融機関は、スタートアップ企業をパートナーとする共創型の取り組みに力を入れている。
もちろん、行内で新たな金融サービスを開発するという道を選ぶこともあるだろう。いずれにせよ金融機関は、FinTech企業と同じ能力を持ちたいと考え、行動している。
最後は、センサーやウエアラブル端末に関わる技術を生かしたIoT(Internet of Things)の領域だ。ライフスタイルやエンターテイメントを変えるものになる。特に保険会社にとっては非常に破壊的で、新しいビジネスモデルを生み出すことになるはずだ。ティム・オライリーは、IoTが保険の世界を変えると考えている。