ITと経営のかかわりを数値や形式値に置き換え、評価する「経営情報学」と呼ぶ学術分野がある。アカデミックの色合いが濃く、学会の参加メンバーも大学の教員や学生、企業の研究員などが中心で、一般には知られていない。そこで、経営情報学の研究を推進する一般社団法人経営情報学会で過去に会長を務めたことのある、慶応義塾大学の國領二郎教授と早稲田大学の平野雅章教授の2人に、同学会の活動内容について聞いた(以下、敬称略)。
経営情報学とは、どういった学術分野なのでしょうか。
国領 経営情報学は英語で「Information Systems」と表記されるため、「IS」と省略されることが多いです。これとよく似た言葉として「IT」があります。1文字違いなのですが、ITの方が一般に認知されていることもあって、混同して捉えられることが多いんですね。つまり、コンピュータサイエンスやシステムエンジニアリングといった、テクノロジーを研究する学術分野なんだろうと。
でも、違うんです。コンピュータというハードや、それに実装するソフト、アルゴリズムなどを研究するわけではありません。もちろん、開発手法や管理体制などを体系化するわけでもありません。
ISは、経営とITのかかわりを研究する学術分野です。新たなコンピュータシステムを導入するとき、ビジネスプロセスを変えたり、仕事の進め方、あるいは組織、配置する人材などを変えたりしているはずです。これらを一体で考えることが、ISの研究です。
経営情報学は、日本では聞きなれませんが、海外では研究や議論が盛んなのでしょうか。
平野 最も進んでいるのはアメリカです。ISの専門大学もありますし、ほとんどの大学には経営情報学部や経営情報学科が設けられています。標準的なカリキュラムも整っていますし、教科書は2~3年ごとに必ず改定されています。
残念ながら、日本はそこまで環境が整っていません。国際会議に参加すると、「あなたの大学の経営情報学部では、何人ぐらいの生徒が学んでいるんですか」と、よく質問されます。「そもそも経営情報学部がない」と答えるのですが、とても驚かれます。