銀行業界にクラウドの波が押し寄せている。三菱UFJフィナンシャル・グループは「Amazon Web Services(AWS)」を採用、クラウドファーストの方針を固めている。海外でも状況は同じだ。米最大手銀行から受注を勝ち取った米Treasure Dataでマーケティングを担当する田村清人氏は、企業内にAWSや「Microsoft Azure」が混在するマルチクラウド時代の到来を予想、チャンスを見出す。

(聞き手は岡部 一詩=日経FinTech)


米Treasure DataでVICE PRESIDENT OF MARKETINGを努める田村 清人 氏
米Treasure DataでVICE PRESIDENT OF MARKETINGを努める田村 清人 氏
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米国の金融機関は、クラウドをどうみなしているか。

 金融業界は変わりつつある。例を挙げるとすれば、米Capital One。リテールバンクの中で、先進技術の採用にかけてはパイオニア的存在の銀行だ。1990年代にデータ駆動型のマーケティングに取り組むなど、以前から先進的な取り組みで知られている。同行は、「Amazon Web Services(AWS)」を取り入れて、その上で内製化を進めている。

 銀行は今まで、多くを外部のツールやベンダーに依存してきた。その理由はタレント不足。能力のあるエンジニアが、銀行内にそれほどいなかったからだ。Capital Oneは、その状況を変え始めている。AWSのイベントで大規模なブースを出していたので理由を聞いてみると、「リクルーティングだ」という。これが彼らにとって、クラウドの良い所かもしれない。

 従来の銀行はシステムを独自開発していた。エンジニアを採用すれば、「当行のシステムを覚えて、開発してくれ」と言わざるを得ない。これは、エンジニアにとってはキャリア的な自殺に等しい。これではタレントは集まらない。しかし、新しいプロジェクトはAWSをベースに開発するという方針を採っていれば、「ファイナンス×AWS」「ファイナンス×クラウド」という切り口で新しいスキルセットが身につくと訴求できる。タレントが集まりやすくなり、人材の問題も解決しやすくなるだろう。

クラウドに積極的なのは、先進的な銀行に限られるか。

 クラウドの波は、金融業界全体に押し寄せている。米最大手銀行から最近、当社が提供するデータ収集ツール「Fluentd」を受注した。金融機関がFluentdエンタープライズ版を有償導入するのは初めてのことだ。

 この銀行は2016年中に、欧州エリアのIT基盤を全てAWSに移行しようとしていた。そのタイミングでログ収集基盤を標準化することになり、採用が決まった。Fluentdがちょうど「Cloud Native Computing Foundation(CNCF)」のトッププロジェクトになった時期だったことも、タイミングが良かったのかもしれない。

 金融業界に簡単に入り込めるとは最初から思っていないが、第一歩としては非常に良いものだ。データには流れがある。その入り口とも言えるデータ収集の分野で、当社のソリューションが選定されたことは意義深い。金融業界でクラウド化が進む中、当社も候補とみなされやすくなるはずだ。

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