ソフトバンクが携帯電話サービスの10周年を記念して2016年10月に始めた「SUPER FRIDAY」。同社のスマートフォンを利用中の顧客であれば牛丼(10月)やアイスクリーム(11月)、ドーナツ(12月)が毎週金曜日にプレゼントされたため、話題を集めた。2016年10~12月の利用数は1200万回以上、ポジティブツイートは約10万件に及んだ。ソフトバンク コミュニケーション本部広告宣伝統括部コミュニケーション戦略部の和田浩史部長と、同コミュニケーション戦略課の杉篤史課長にキャンペーンの狙いや効果などを聞いた。
SUPER FRIDAYを企画した経緯を改めて聞きたい。
ソフトバンクがモバイル事業を始めて10周年を迎えるため、顧客還元策を考えた。顧客還元の手法はいろいろとあり、契約数が3000万件を突破した際には「3000万人突破!大感謝プレゼント」(2012年8月)として、お父さんグッズなどをプレゼントした。新しい取り組みを実現できないか検討している過程で出てきたアイデアがSUPER FRIDAYだ。
ソフトバンクはこれまで「予想外」を提供してきた。普通の顧客還元策より非日常的な体験を提供したかった。そこで思い切って、パートナー企業の店舗で牛丼やアイスクリーム、ドーナツをプレゼントしようということになった。普通ならソフトバンクショップへの来店につながるような施策を考えるが、このほうがソフトバンクらしい。
パートナー企業の店舗を普段利用していれば、プレゼントする商品は日常的なものかもしれない。ただ、実際の利用実績とは別に我々が調査した結果では、「パートナー企業の店舗に半年以上、行っていなかった」というユーザーが半数以上いた。それまで定常的に利用していなかった顧客が確実に訪れており、「今回を契機に今後も行きたいという気持ちになった」という回答も多かった。その意味では、パートナー企業にとっても良いキャンペーンにできたのではないか。
プレゼントする特典のラインアップはどう決めたのか。
商品の魅力や全体のバランスを含め、総合的に判断した。もちろん、パートナー企業あってのキャンペーンとなるため、例えば先方のキャンペーンと重なって実現できないことがある。ソフトバンクのユーザーが大量に押し寄せると、かえって顧客に迷惑をかけてしまう可能性があるといった判断もある。こちらから無理にお願いするというよりは一緒に盛り上げていけるパートナーを根気良く探して実現した。最終的には特定の年齢や性別に偏ることなく、幅広い顧客にマッチしたラインアップにできたと考えている。
牛丼は男性、アイスクリームとドーナツは女性向けの印象を受ける。
契約者の年齢や性別はわりあい人口構成に近いため、まんべんなく利用された。吉野家では若い女性がものすごく増えたと聞いている。サーティワンでは普段あまり訪れないサラリーマンの来店も多かったようだ。男性と女性の比率はどちらかといえば女性が多い。時間に余裕のある学生の利用も目立った。
具体的な利用状況は。
パートナー企業の都合もあって詳細な数値は開示できない。ただ、店舗にもよるが、SUPER FRIDAYを実施していない平日、あるいは前年同月との比較で顧客が3~10倍に増えるといった効果があった。
特典を受けられる日を毎週金曜日とした狙いは。
金曜日はともかく、特定の曜日に固定することで継続性を持たせたかった。特定の日にちに固定すると忘れてしまう。土日はパートナー企業にとっても顧客が多い書き入れ時に当たり、金曜日が一番メッセージを打ち出しやすかった。とにかく毎週金曜日にはソフトバンクでドキドキ、ワクワクしてもらいたいと考えた。
特典を月ごとに固定した狙いはあるか。
曜日を固定したのと同様な狙いだ。終わった後に思い出して後悔するのではなく、毎月最低4回のチャンスがあれば、今週は行けなくても来週に行こうと思ってもらえる。最終週を逃すとどうしようもないが、顧客にとっても利便性が高いと判断した。
開始当初は一部の店舗で混乱もあったようだ。クーポンの有効期限切れの問題も取り沙汰された。
我々が想定した利用者数を前提に店舗側で準備してもらっていたが、想定以上の顧客が押し寄せた。翌週から体制を強化したため、1週目以外は混乱がなかったのではないか。不正防止のために設定したクーポンのタイマーも「食べ終わったころに(有効期限が)切れていた」との声があったため、注記を目立つように変更した。このほか、SUPER FRIDAYのお知らせメールが届かないという声が多かったが、受信設定すれば問題なく利用できる。