東京証券取引所や大阪取引所を傘下にもち、世界トップレベルの取引所グループである日本取引所グループは、2015年4月、上場企業が決算短信や人事異動などを発表する「適時開示情報閲覧サービス」などを支えるインターネット接続部分の大幅な強化に踏み切った。

 2020年を見据えて、性能面で大幅な増強を施したのに加え、日々巧妙かつ高度になるサイバー攻撃からシステムを将来にわたって守るため、セキュリティ管理の仕組みとベンダーとの分業による運用体制も刷新した。

上場企業3400社の適時情報開示を支える

 日本取引所グループは2015年9月に、株式売買システム「arrowhead」の5年ぶりのリニューアルを控えている。新システムは業界最高水準の「99.999%(ファイブナイン)」の稼働率を目指す。

 同グループにとって、インターネットによる情報発信も欠かせない活動のひとつだ。B2Bがビジネスのメインとなっている同グループにとって、インターネットサービスは貴重なB2Cの窓口でもあり、そこでは迅速かつ正確な情報提供が求められる。

 そのなかでニーズも注目度も高いのが、上場企業が決算短信や人事異動などを発表する「適時開示情報閲覧サービス」。株価の行方を左右する重要な情報が次々と掲載されるだけに、国内外の投資家などから常にチェックされている。

図●東京証券取引所の「適時開示情報閲覧サービス」の画面。3400社余りの上場企業が、ここで情報開示を行う。
図●東京証券取引所の「適時開示情報閲覧サービス」の画面。3400社余りの上場企業が、ここで情報開示を行う。
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 日本取引所グループが利用するインターネットサービスの運営を担う東京証券取引所では、このサービスを安定的に提供するために、2010年5月、独自の高速ネットワーク「arrownet」と「KDDI インターネットゲートウェイ」を連携させ、帯域の拡張性とサイトの冗長性を確保した。メイン回線に1Gbps(ギガビット/秒)まで拡張可能な機器を導入したほか、100Mbps(メガビット/秒)のバックアップ回線を用意。インターネットへの接続環境を二重化して、BCP(事業継続計画)で求められる冗長性を実現している。

 しかし、上場企業数やネットユーザーの増加を背景に、トランザクション増やセキュリティリスクの増大など、証券取引所とインターネットを取り巻く環境は大きく変化しつつある。当然、インターネットアクセス基盤に求められる要件も変わってくる。より堅牢性と高速性が求められ、しかもコストは抑えなければならない。そこで今回の刷新に踏み切った。

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