安全確保の面でも一役買う
「安全確保の面でも、タブレットによる改善効果は大きい」と話すのは、IT本部 IT計画(運輸系) 担当課長の小山秀一氏だ。例えば、運行中に何らかの異常が発生した場合にはすぐに、現場付近の指令所と運行車両の乗務員との間で連絡をとる必要があるが、これまでは無線による音声通信だけが頼りだった。だがタブレット導入後は、標準機能のテレビ電話で相手の顔を見ながら通話したり、タブレットのカメラで現場の状況を撮影して、アクシデントの詳細を速く正確に共有できるようになった。このことが「ダウンタイムの削減につながっている」(小山氏)という。
天候や車両トラブル、事故などによって運行状況に遅延や変更が生じると、乗務員や駅員は、乗客への案内に忙殺される。目的の電車に乗り換えられるかどうかを心配する大勢の乗客に、迅速に正確な情報を伝えられるよう、タブレットには列車の運行状況をリアルタイムに表示する「運行情報アプリ」が搭載されている。
「運行情報アプリ」で表示する最新の運行情報は、今回設置した専用のキャッシュサーバーから配信される。運行情報に変更が生じると、自動的にキャッシュサーバー上のデータが更新され、乗務員が携行するタブレットのアプリにも随時配信される。
案内も充実、かつスピーディに
乗り換え案内業務も、以前は乗務員が紙のポケット時刻表をめくりながら振替路線などを確認していた。JR西日本 IT本部 IT計画(運輸系)の 藤原正道氏は、「従来と比較すると、情報の正確さやスピードは格段に向上している。お客様の不安を解消する効果も大きい」と、タブレット導入による効果を語る。
タブレット上には、顧客サービスの質を高めるためのアプリもいくつか搭載されている。中でも活躍しているのは、増え続ける外国人客への案内が円滑に行えるようにするために作られた「訪日顧客案内サポートツール」である。
このアプリは日本語、英語、韓国語、中国語(簡体字/繁体字)対応しており、「どこに行きたいのか」「何を探しているのか」といった、旅行者向けの基本的な質問と回答が各国語で表示される。観光客が必要とする情報はパターン化できるため、乗務員と観光客が互いにタブレットの画面をタッチするだけで基本的なやり取りが成立する。パターン外の質問に備えて、翻訳サイトも使えるが、「訪日顧客案内で大抵の質問には答えられており、お客様からも大変好評をいただいている」と、車掌の奥氏は語る。