現場とIT部門の双方が試行錯誤続ける

 試験導入から1年後の2015年3月、JR西日本は北陸新幹線開業という大イベントを迎えた。小山氏は、「新幹線は日本が世界に誇れる技術。北陸新幹線によってその良さを知る人がさらに増えてほしいと願っている。この時期にタブレットを投入したことは、従業員のモチベーション向上のきっかけにもなっている」と新システムのもたらしたもう一つの効果を語る。従業員が快適に働ける環境が、ひいては顧客サービスの向上につながったと言えそうだ。

 それでも、現場とIT部門の双方が試行錯誤することで、日々システムは進化している。例えば、北陸新幹線の車掌、奥氏が案内業務でよく使う「観光案内MAP」は、乗務員が自発的に企画して作った“手作り”の資料だ。大きな字で読みやすく、路線図や観光地情報もポイントを絞って理解しやすいよう、現場目線を生かして作られている。

図●乗務員の発案・作成による「観光案内MAP」。カラフルでポイントを絞った図と大きな字が分かりやすい。
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図●乗務員の発案・作成による「観光案内MAP」。カラフルでポイントを絞った図と大きな字が分かりやすい。

 今回のタブレット導入により、IT本部にも変化が起きている。「フィードバックが多いことが、我々IT部門の人間にとっても刺激になっている。このプロジェクトそのものが試行錯誤から始まり、いまもそれが続いている。現場とIT部門の双方で試行錯誤を繰り返しながらシステムを成長させていきたい」と小山氏。北陸新幹線開業という一大イベントを支えた新システムの在り方に、日本の新幹線がまた新しい段階を迎えつつあることを実感できる。

西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)
本社所在地:大阪市北区芝田二丁目4番24号
設立:1987年4月1日
資本金:1000億円
従業員数:3万234人(単体)(2015年4月1日現在)
主な事業内容:運輸業、流通業、不動産業旅客鉄道事業、その他