タブレットの導入で、幅広く業務のテレワークを可能にした佐賀県庁。家畜伝染病など危機への迅速対処でさっそく効力を発揮するなど、県内各地に出向く職員の業務効率化に大きく役立っている。真の狙いは「職員が県民とともにいる時間を増やし、サービスのレベルを向上すること」だという。森本登志男・佐賀県最高情報統括監(CIO)の指揮のもと、強力に推進されるワークスタイル変革に迫る。
2015年1月17日、土曜日の13時00分。佐賀県武雄市にある西部家畜保健衛生所に衝撃が走った。「鳥インフルエンザ発生の疑いあり」との第一報が入ったのだ。通報したのは伝統工芸品の有田焼で有名な有田町の養鶏農家だった。
西部家畜保健衛生所はすぐに職員2名を現場に派遣し、簡易検査を実施した。結果は“陽性”。さらに中部家畜保健衛生所でも簡易検査を実施し、こちらでも陽性が確認された。佐賀県はすぐに農林水産省に事態を報告。同日、「農林水産省鳥インフルエンザ防疫対策本部」が設置され、国としての対応方針が決定された。
このとき、現場で活躍したのがタブレット端末を使ったクラウド型のシステムだ。西部家畜保健衛生所保健衛生担当係長の原口信江氏は「タブレット端末を使って現場で撮影した写真を、その場からWebストレージにアップして関係者でリアルタイムに共有できた。国への報告も迅速に行えた」と語る。緊急事態発生時に大切とされる初動の段階で、迅速かつ正確な対応ができたという。
当日は佐賀県庁全体でもシステム利用に異変が起きていた。土曜日でありながら、県庁の仮想デスクトップへのアクセス数が平日よりも多かったのだ。「自宅や外出先から対応マニュアルを見たり、職場の上司や部下に緊急連絡を回したりするなど、職員たちが活発に動き回っていた。休日でありながらも、自分が何をすべきかが分かり、冷静に対応できた」と佐賀県統括本部情報・業務改革課業務改革担当係長の陣内清氏は指摘する。
非常事態に迅速かつ的確に対応できた背景には、全国に先駆けて展開されていたテレワークへの取り組みがあった。2014年10月には、4000人の県職員全員に対して仮想デスクトップ環境を構築。1100台のテレワーク対応タブレット端末も導入した。この時点で佐賀県庁全庁でテレワークを実施できる体制が整っていたのである。なぜ佐賀県庁ではこうした取り組みが進められていたのだろうか。

