フィルムレスへ移行するためにはバックアップシステムが必要

 フィルムからフィルムレスへ。これはレントゲン写真の世界における、今の大きなトレンドである。レントゲン写真をフィルムに転写し、フィルムをシャウカステンと呼ばれる発光器に当てながら、患者に見せて説明する。このおなじみのシーンはなくなりつつある。背景にあるのは医療自体の進化だ。

 レントゲン写真はX線を発見したレントゲン博士にちなんだ名称だが、近年では、X線CTをはじめ、MRI、PETなどX線以外の方法を取り入れた医療用画像も普及し、バリエーションが増えてきている。全体としては多くの画像を使って、診断や説明が行われる方向にある。

 しかし、CTやMRIで撮影される写真は一度で100枚以上にもなり、シャウカステンでは対応できない。当然、管理方法も複雑になる。レントゲンフィルムの費用がかさみ、保管や出し入れにも手間がかかる。フィルムの劣化も無視できない。こうした中でデジタル技術の進化もあいまって、フィルムレス化の波が広がっているのである。

 北見赤十字病院でも、フィルムと併用しながらフィルムレスへの準備を進めてきた。そして2014年12月1日の病院の新築移転を機に、完全なフィルムレス体制への移行に踏み切ることになったのである。

 そこにはクリアすべき課題があった。バックアップシステムの問題である。万が一、画像データを管理するPACSがダウンすれば、画像を見ることすらできなくなる。手術の方法を確認するなど、一刻を争う場合には大きな影響が出かねない。

 しかし、バックアップシステムとしてPACSと同じものを構築すれば、費用は莫大になる。普段は利用しないシステムだけに、多額な投資をすることは難しい。そこで浮上したのが、汎用のタブレットであるiPadと安価な医療用画像ビューワーのソフトウエアを組み合わせたシステムの構築だった。

写真2●昨年12月に新築移転された北見赤十字病院
写真2●昨年12月に新築移転された北見赤十字病院