開発コストの安さと、定評あるOsiriX HDの採用を評価

 「バックアップシステムの検討を始めたのは、病院移転の2年前。バックアップシステムの必要性とともに、ベッドサイドでの使い方を含めた明確な活用ビジョンを固めながら、根回しを進めていった」と語るのは、北見赤十字病院医療技術部診療放射線科の中島勲氏。PACSの構築も中島氏が担当していた。

 PACSの開発を担当するSIerは札幌に拠点があり、北見までは移動に5時間かかる。万が一、PACSに障害が発生した場合には、最短でも復旧にそれだけの時間が必要になるということだ。バックアップシステムがなければ、安心してフィルムレスに移行することはできない。しかし、それほど予算をかけられないというジレンマに陥っていた。

 そんな時に、中島氏をもともと取引があったKDDIが訪れた。バックアップシステムの具体策を模索しているという話を聞いて、ニュートン・グラフィックス社とノーステック社を伴っての訪問である。2社とも医療用画像システムのOsiriX(オザイリクス)に豊富な実績を持つ企業だ。

写真3●「コストを抑えるにはこれしかないと思った」と語る医療技術部診療放射線科の中島勲氏
写真3●「コストを抑えるにはこれしかないと思った」と語る医療技術部診療放射線科の中島勲氏

 OsiriXは医療用の画像規格であるDICOMに特化した画像処理ソフトウエア。Mac OS X用に開発が進められてきたのに加え、現在ではiOS用のバージョン「OsiriX HD」も用意されている。日本ではニュートン・グラフィックス社が唯一の公式スポンサーであり、ノーステック社はその協力パートナーである。「2社ともOsiriXに実績のある企業として名前は知っていた。道内に経験豊富なベンダーがいたことはラッキーだった」と中島氏は語る。

 当然、他のメーカーからも提案を受けたが、DICOMサーバーも含めた費用面の安さと、臨床現場で定評のあるOsiriX HDを採用する点を考慮して、KDDIへの発注が決まった。費用で言えば「通常のPACSサーバーの半分以下」(中島氏)だったという。