マニュアル不要のシステム目指す
だが、急ピッチの開発のなかでもあいの風とやま鉄道が徹底的にこだわった点がある。使い勝手である。第三セクターである同社には出向者も多く、現場経験が短い社員もいる。そこで「画面を見ただけで直感的に操作できるシステムを目指した」(運輸部営業課の朝倉理恵氏)。
「ライナー券発券システム」を実際に見てみると、使い勝手にこだわった部分が随所に見て取れる。まず目に付くのがトップ画面のシンプルさだ。「実際にはそのような場面はないが、お客様にも操作していただけるくらいのレベル」(朝倉氏)に仕上がっている。
一番頻繁に使用する「発券業務」のボタンは、画面の約半分を占めるほどに大きい。このボタンを押すと、日付の選択画面が表示され、そこで日付を選択すると、次は列車を指定する画面に進む。その後に表示される乗車駅と降車駅の指定画面では、「間違えないように、乗車駅の選択画面は青字で、降車駅の選択画面は赤字で表示するようにしている」(朝倉氏)。
乗降駅までを入力し終わると、座席管理データベースのデータがリアルタイムで呼び出され、画面の座席表に表示される。ここで空席を確認して、座席を指定し、携帯しているモバイルプリンターからライナー券を発券する。「ライナー券の迅速な発行」というメインの業務に徹底的にフォーカスした作りだ。
しかも、副次的な効果もある。「車内のアテンダントは、この座席指定画面を見れば発券状況が分かるので、ライナー券を持っていないお客様だけに声を掛けることができる。アテンダントの業務が軽減されるとともに、お客様に切符を提示いただくというご面倒をおかけせずに済むようになった」と吉村氏は指摘する。使い勝手良く仕上がったことで、開発業務も大いに効率化した。現場向けのマニュアル作成の時間と手間が不要になったのだ。「作ったマニュアルは、管理者向けの設定マニュアルだけ」と朝倉氏は話す。手間のかかるマニュアル作成が不要になった分、開発業務に集中できた。