製薬最大手のファイザーは2014年1月から3月にかけて、社内のiPhoneおよびモバイル通信環境を全面刷新した。2011年春に導入したiPhone 4に替えてiPhone 5S約4500台を導入するとともに、新たにモバイルルーター「Wi-Fi WALKER」を1人1台配布することで、通信環境を大幅に拡充。サポート体制にも工夫を凝らし、モバイルユーザーの動きを「止めない」モバイルインフラを実現した。

写真●「とにかくMRの動きを止めないことを目指した」と話す岡崎昌雄氏
写真●「とにかくMRの動きを止めないことを目指した」と話す岡崎昌雄氏

 「目指したのは、とにかくMRの動きを止めないこと」。今回のモバイルインフラ刷新について、ファイザーのビジネステクノロジー担当部門長、岡崎昌雄氏はこう語る。製薬会社の営業職は特にMR(医薬情報担当者)と呼ばれ、医師や薬剤師などに対し、医薬品を適正に使ううえで必要になる様々な情報を提供し続けることが重要な責務だ。大手製薬会社の中でも営業力で知られるファイザーのMR部隊は、約2500人とも言われ、業界屈指の規模を誇る。

 ファイザーのモバイルコンピューティングの歴史は古い。ラップトップPCに始まり、ノートパソコン、タブレット、フューチャーフォン、PHS、スマートフォンと、あらゆる世代のモバイル端末活用に積極的に取り組んできた。スマートフォンの大規模導入は今回が3回目になる。最初は2009年のWindows Mobile端末、2011年春にはiPhone 4を導入し、それを今回はiPhone 5Sに切り替えた。

 これら過去の豊富な経験を元に、同社が今回作り上げた「止めない」インフラとはどのようなものだろうか。導入の経緯やMRによる利用の実態を見てみよう。