話題となった新庁舎移転と同時にスタートした豊島区役所のワークスタイル変革への取り組みが注目を集めている。新庁舎建設という絶好の機会を逃さず相乗効果を追究し、職場とワークスタイルの変革を断行。2016年1月には日本テレワーク協会の「第16回テレワーク推進賞」を受賞した。その成功の鍵はどこにあったのだろうか。
「このチャンスを逃してはならない」。高野之夫 豊島区長の檄が飛んだ。新庁舎の建設に合わせて、庁舎内のネットワーク環境を見直し、ペーパーレスなどワークスタイル変革を推し進めようとプロジェクトが立ち上がったのだ。
それから3年後の2015年5月。豊島区役所の新庁舎がお目見えした。奇抜なデザインの外観や内部の吹き抜け。庁舎の上には高層マンションがそびえ立つ。全国で初めてマンション一体型を採用し、実質ゼロ円で新庁舎を建設したことで大きな話題となった。
斬新なのは外観だけではない。新庁舎には職員のための新たなテレワーク環境も整備された。各フロアには無線LANとIP電話が導入され、ノートPCやタブレットを持ち歩けば、どこでもIP電話が使える。職員たちは自席に縛られることなく、最適な場所で仕事ができるようになった。
今、このテレワーク環境は“お役所仕事“を大きく変える原動力になっている。豊島区政策経営部情報管理課長でCISO(最高情報セキュリティ責任者)も務める高橋邦夫氏は、「今回目指したのは、ワンストップ、ノンストップ、ワンライティング」と表現する。
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ワンストップは複数の窓口や担当者間をたらい回しにせず、1カ所で対応すること。ノンストップは災害時などでも区役所としての基本サービスを継続すること。ワンライティングとは、区役所での手続きなどの際、区民が書類に何度も同じことを記入しなくて済むようにすることである。区役所のサービスを住民中心に組み替えていくための仕掛けとしてテレワーク環境があるわけだ。
豊島区の取り組みは各方面で注目を浴びている。多くのメディアで取り上げられたほか、2016年1月には日本テレワーク協会の「第16回テレワーク推進賞」を受賞。職場とワークスタイルの変革を断行する思い切った取り組みが評価された。その成功の鍵はどこにあったのだろうか。