JR東日本は2014年3月から5月にかけて、駅員や、保線、電気設備、土木、建設など技術系の社員を対象に、約1万4000台にのぼるiPadを導入した。これに先立ち2013年夏、乗務員向けに約7000台のiPad miniを導入したところ、駅員や技術系職種の社員からも、「使いたい!」という声が多数上がっていたという。

総合企画本部システム企画部の西村佳久次長
総合企画本部システム企画部の西村佳久次長

 実は同社にとって今回のiPad導入は、異例のプロジェクトだった。総合企画本部システム企画部の西村佳久次長はこう語る。

 「どんなIT投資でも、効果は当然求められるもの。当社も過去、端末を導入する場合には、何の業務に利用するかを明確に規定していた。だが、こと今回に関しては違った。利用目的をすべて規定せずに、現場の裁量による部分を大きくした。そのため、従来に比べると、売り上げ拡大やコスト削減といった定量的効果では表現できない、定性的効果もあった。それでも導入に踏み切ったのは、現場社員が自発的に工夫してツールを使える環境を整えることで、現場力を強化したい、という経営層の思いが強かったからだ」。

 JR東日本の社員が実践する、鉄道の現場ならではのiPad活用シーンや、現場が自発的に編み出したiPad活用法、そしてユーザーの自由と安全性を両立するためにシステム部門が知恵を絞った、システム面や運用ルールの工夫をみていこう。