「撮る」だけで、現地調査の報告完了

 JR東日本には、保線技術センターや信号通信技術センターなど、線路や設備の点検・保守などを司る多数の技術センターが各地に配置されている。これら技術系職場でもiPadは日常業務に欠かせない道具として活躍している。特に重宝されているのが、独自開発の「異常時情報共有システム」である()。

技術系社員が使うiPadのホーム画面。右下が「異常時情報共有システム」のアイコンだ
技術系社員が使うiPadのホーム画面。右下が「異常時情報共有システム」のアイコンだ
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「異常時情報共有システム」。撮影した画像を位置情報と共に自動投稿し、指令など関係者に即座に共有する(掲載にあたり、個々の画像にはボカシを入れてある)
「異常時情報共有システム」。撮影した画像を位置情報と共に自動投稿し、指令など関係者に即座に共有する(掲載にあたり、個々の画像にはボカシを入れてある)
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 「現地調査の際、線路などに何らかの問題、例えば倒木などを発見したときには、iPadで現場の様子を撮影する。それだけで『異常時情報共有システム』に自動的にアップロードされ、関係の社員と共有できる」(設備部の担当者)

「iPadで撮影するだけで、関係の社員と共有できる」と語る設備部の担当者
「iPadで撮影するだけで、関係の社員と共有できる」と語る設備部の担当者

 同システムは、iPadで撮影した写真や動画を、GPSで取得した位置情報とともに共有サーバーに自動登録する。コメントを付けたい場合は、登録前に付けることもできる。登録された写真や動画は、全社員が見られる状態になるため、ほぼリアルタイムの情報共有が可能だ。

 以前はカメラで撮影した写真などをパソコンに取り込み、Excelなどの文書に貼り込んで報告書を作成し、関係各所にメールで送っていた。これが、iPadで撮影する、というアクション一つで済むようになった。

「何度も電話で報告していたのが不要になった」と語る電気ネットワーク部の担当者
「何度も電話で報告していたのが不要になった」と語る電気ネットワーク部の担当者

 雪国では、線路が雪で通行不能になりやすい箇所がある。「雪が降っているけど、○○の踏切は大丈夫?」といった確認の電話が、支社などから現場の担当者に向けて頻繁にかかってくるが、当の担当者は踏切の除雪で忙殺されている、といった場面もあり、効率的な連絡方法とは言えなかった。異常時情報共有システムを使えば、iPadで撮影するだけで、全社の関係者がひと目で現場の状況を確認できる。撮影場所の位置情報も、地図上に表示される。

 雪国に限らず、鉄道を安全に動かすために、JR東日本の社員は日々、様々な現場でおびただしい回数の現地調査や点検を実施している。その際に異常などがあれば、ほぼリアルタイムに写真がサーバーに登録され、組織を問わず共有できる。このことには大きな意味がある。