「待ってました!」駅や技術系の現場にみるみる浸透

フリーソフト「筆談パット」の画面。現場の社員が見つけ、活用している
フリーソフト「筆談パット」の画面。現場の社員が見つけ、活用している
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 新駅舎完成以降、時間、曜日を問わず大勢の乗客で賑わう東京駅。駅員の女性が丸の内北口の改札近くで乗客に道を聞かれ、案内図を見ながら説明している。手にしているのは、2014年春に配布されたiPad Air。改札やみどりの窓口などに配備されている。

  iPadには、駅構内の案内図、電車の運行状況を確認できる「モバイルATOS」といった独自のアプリのほか、空きロッカー検索、駅周辺の案内図、筆談アプリ()など、多くの便利ツールが入っている。

「まさに待望のツール」と話す駅員(サービスマネージャー)
「まさに待望のツール」と話す駅員(サービスマネージャー)

 「このiPadを使うようになってから、お客様をお待たせする場面がかなり減った」。こう笑顔で語るのは東京駅でサービスマネージャーを務める女性駅員だ。サービスマネージャーは常にiPadを携帯して、駅構内を巡回する。以前は、紙の資料を携帯していたという。

 問い合わせの内容は、比較的簡単な道案内から「テレビで紹介されたあのお土産はどこで買えるの?」といったものまで、多岐にわたる。その場で答えが見つからないと、内勤の社員に電話をして調べてもらうため、乗客をかなり待たせてしまう場面もあった。「今は、その場で調べられる。お客様も画面をのぞき込んで、一緒に探していることもある」。

「改札業務のかたわらでも、一目で情報を確認できる」と話す改札担当の駅員
「改札業務のかたわらでも、一目で情報を確認できる」と話す改札担当の駅員

 主に改札業務を担当する別の女性駅員も、「電車の運行が乱れているときなどには、改札でも多くの問い合わせを受けるが、改札業務の合間でも、iPadで運行状況をすばやく確認し、ご案内できるようになった」と話す。モバイルATOSが導入される以前は、バックヤードのパソコンでしか、運行状況を確認できなかった。その場ですぐに“答え”が見られるメリットは計り知れない。「この1~2分の違いが非常に大きい」のだという。

 モバイルATOSが使えるようになったのは2014年12月1日だが、先のサービスマネージャーの女性駅員も「まさに待望のアプリ」と手放しで歓迎する。「電車が止まったときなどは、エスカレーターの出口付近でご案内に立つ。そんなときも、次の列車が今どこにいるかを一目で確認でき、自信をもって素早くご案内できる」と話す。

 また、東京駅で特に問い合わせが多い空きロッカーの案内に絶大な効果を上げているのが、「コインロッカーなび」だ。東京駅には、おびただしい数のSuica対応コインロッカーがあるが、その空き状況が一目で分かるというものだ。「荷物の大きさに応じた空きロッカーがどこにあるかをすぐにご案内できるようになった」(改札業務担当の女性駅員)。例えば上野駅でロッカーがいっぱいでも、東京駅に空きがあると分かれば、東京駅で荷物を預けて周辺に遊びに行く、といった代案を示すことも可能だ。

 実は、「コインロッカーなび」で空きロッカー検索ができるのは、東京駅などわずかな駅に限られている。コインロッカーなびは元々、コインロッカーの設置場所を案内するアプリだが、これにJR東日本が開発した「Suicaコインロッカー空き情報提供システム」とを連携させることで実現した。

 JR東日本の駅にとって、iPadはもはや欠かせない存在になっている。