SDNの新たなメリットとして最近急浮上しているのがセキュリティ分野への応用だ。「セキュリティ面からネットワーク仮想化に関心を高めているユーザー企業が多い」と米ヴイエムウェアの最高技術責任者(CTO)は指摘する。ベンダーの営業体制の強化も進んでいる。新たなユースケースの開拓を進め、今後はより広範な企業ユーザーへのSDNの展開を図る構えだ。


 ここへきてもう一つ、新たなメリットとして最近急浮上しているのがセキュリティ分野への応用だ。

 米ヴイエムウェアのマーティン・カサド ネットワーク担当最高技術責任者(CTO)は、4月末に開催した記者会見で「ネットワーク仮想化は、アーリーアダプターだけが興味を示す段階を過ぎ、一般のユーザー企業が導入する段階に入った」と語り、「最近では、セキュリティ面からネットワーク仮想化に関心を高めているユーザー企業が多い」と続ける(インタビューへ)。

 同社が提供する「VMware NSX」は、いわゆるオーバーレイ方式のネットワーク仮想化ソリューションである。ハイパーバイザーに含まれる仮想スイッチがトンネリングを張り、既存LAN上に論理的に分割された仮想ネットワークを構築する。

 VMware NSXは分散型ファイアウオール機能を備えており、ハイパーバイザー上で動作する。この機能を用いることで、ネットワークの出入り口でしか防御できない既存のハードウエアタイプのファイアウォールと比べて、アプリケーション単位など細かくセグメントを分けた防御が可能になる(図4)。同社の言葉でこれを「マイクロセグメンテーション」と呼んでいる。ヴイエムウェアのソリューションでは、アプリケーションの状態(コンテキスト)に応じてセキュリティチェックをし、ハイパーバイザー上で防御することが可能という。

図4●SDN の新たなユースケースの一つ「マイクロセグメンテーション」 
図4●SDN の新たなユースケースの一つ「マイクロセグメンテーション」 
 米ヴイエムウェアによると、ネットワーク仮想化の仕組みを用いて論理的にセグメントを最小化する「マイクロセグメンテーション」を求めるユーザー企業が、米国の金融機関を皮切りに増えているという。ネットワーク仮想化の新たなキラーサービスになる可能性もある
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 カサド氏によると「米国の大手投資銀行5行のうち3行が既にVMware NSXを導入したほか、米国農務省(USDA)や米ベストバイ、米スターバックスといった一般企業が導入を始めている。これらの企業の多くがセキュリティ面の関心からネットワーク仮想化を入れた」と打ち明ける。今のところ米国市場がこのユースケースは先行しているが、今後日本を含めてマイクロセグメンテーションがSDNの新たなキラーユースケースとして急浮上する可能性もある。

 このように、ここにきて企業ユーザー向けのSDN市場は、新たな動きが続々と登場している。企業ユーザー向けSDN市場は2014年以降、本格的に立ち上がりそうだ。

SDN市場本格化に向け営業体制の拡充も

 営業体制の強化も進む。例えばNECはSDN市場拡大に向けた人的リソースも大幅に増やす。新たにSDNの選任技術者を100名追加するほか、2015年度にはSDNのトレーニングを受けた営業を、販売パートナーを含めて2000名体制とする。「企業ユーザー向けのSDN市場を急拡大したい」(同社の北風二郎ソリューションプラットフォーム統括本部長代理)というNECの本気度が伝わってくる。

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