サーバーを自社で持たず、サービスを利用する「クラウドコンピューティング」への移行が大きな話題となっています。従来はオフコンやパソコン、サーバーを自社に設置してITを活用する形態が主でしたが、クラウドコンピューティングではサーバーなどを設置しなくてよいため、少ない投資で済むだけではなく、運用も簡素化されます。

 「ITの必要性は理解できるが、どのように活用していいか分からない。コストが負担できない」と述べる経営者は少なくありません。しかし実は、中小企業こそクラウドコンピューティングのメリットを受けると言われています。資金面でハードルが下がるからです。

 クラウドコンピューティングでは、必要になったら使いたいサービスを選んで使いますが、事前に準備しておくものもあります。それはインフラです。インフラがなければ、必要な時に必要なサービスを使えません。優れたクラウドサービスを選び、使用しても、活用できず効果もあがらないのです。

 インフラには、ハードウエア、ソフトウエアなどのIT資源と、データなどの情報資源があります。さらに、IT資源や情報資源を上手に使い、思わぬ損失を被らないするための管理資源があります。ITを使いこなす人や組織、支援者も重要な資源です。これらの資源が整備されていなければ、クラウドがあってもIT活用で効果を上げられません。

1.IT環境の整備

 これまでも、ITを活用するにはパソコンやLANケーブル、ルーター、サーバーなどの機器が必要でした。クラウドへ移行すると、サーバーは不要になりますが、移行後も必要なものがあります。クラウドコンピューティングに対応するためには、高速で大量のデータを送受信できる通信環境の整備が欠かせません。NTTやKDDI、ソフトバンクといった接続事業者(回線事業者)や、OCN、nifty、IIJなどのインターネットプロバイダーとの契約が必要です。

図1●クラウドサービスへの移行が進んでも、インフラ面で必要なものがある
図1●クラウドサービスへの移行が進んでも、インフラ面で必要なものがある
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 モバイル機器からのアクセス、あるいは社外からのアクセスを可能にする設備が必要なケースも増えています。近年は、モバイル機器の普及が進んでいます。自社のアプリをタブレットやスマートフォンで利用できるようになってきており、社員が私的に保有するモバイル機器で社内データへアクセスできるBYOD(Bring Your Own Device)も普及しつつあります。こうした動きに伴って、社内でもWi-Fiルーターを設置して社員のモバイル機器からのアクセスに備えるようになってきました(図1)。

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