「攻めのIT経営」とは、明日に向かってアグレッシブにチャレンジしていく経営課題を掲げ、それをIT活用により実現している経営をいう。

 経営環境が激変している今日、従来の問題解決的な経営ではなく、経営環境の変化を読み、自社の持ち味や強みを考慮して、中長期の視点から「ありたい姿」を描き、その実現に向けて取り組むことが求められる。つまり、攻めの経営課題を明確に決め、経営革新に向けて種々の方策を講じ、着実に成果に結び付けていくことである。

 その重要な方策の一つに、「空気」や「水」のように抵抗なく普遍的に受け入れられるようになったITの活用がある。効果的にITを活用できている経営が「攻めのIT経営」に相当する。

 昨年度(2014年度)の11月から新たにスタートした「『攻めのIT経営』中小企業百選」公募要領(経済産業省)においては、「攻めのIT経営」を次のように定義している。

「攻めのIT経営」とは、 既存事業分野の質的改革・量的拡大のためのITを活用した取組み ~既存ビジネスの強化により利益を拡大するIT利活用~ 新規事業分野へのITを活用した取組み ~新事業への進出時における新たな価値を創出するIT利活用~。

「攻めのIT経営」の必要性

 経営環境は大きく変わってきており、今後もさらに変化し続ける。市場の成熟化は、昭和50年代から話題になり、市場の要請は多様化してきている。これらに応えようとしてメーカーは、より多機能化・高機能化・複雑化した商品・サービスを次々と発表し、商品とサービスのライフサイクルの短命化が進んでいる。そして、グローバル化が一層拍車をかけている。

 人口構成が変わって少子高齢化が顕著になりつつあり、かつ微減時代に入ってきた。今まさに、これらの問題に対処していくために「地方創生」が大きな話題になっている。

 グローバル化の進展は、この25年間で当たり前になってきた。世界の地図が大きく変わり、様々な事象を地球規模で考える必要が出てきた。

 約20年前にインターネットがビジネスで初めて使われるようになり、「IT革命」と言われてきたが、クラウドコンピューティングとスマホ・タブレットのモバイル端末によって、IT活用の考え方も大きく変わりつつある。

 消費者の購買行動を例にとると、ある商品を知ってから購入に至るまでのプロセスは、従来AIDMA*1の法則に従うケースが多いと言われてきたが、AISAS*2といったプロセスをとる消費者が大幅に増えてきたこともITの進歩による環境変化である。さらに昨今は、クラウドコンピューティングとモバイル端末を利用しての「ショールーミング*3」が急速に進行中だという。

*1:AIDMA:Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の略 *2:AISAS:Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Action(行動、購入)、Share(商品情報等の共有)の略 *3:ショールーミング(showrooming):百貨店などの小売店で、購入したいと思う商品を確認し、購入する際は、Web上で比較検討してネット通販で購入する形態

2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
4,395 4,437 3,528 3,276 3,307
表1●近年の経営革新計画承認状況
2014(平成26)年3月末現在。総務省・経済産業省「平成 24 年経済センサス―活動調査」を再編加工した。ちなみに、中小企業白書2014年版(中小企業庁)によると、2012(平成24)年度における中小企業数は約385万社で、うち会社は168万社

 こうした経営環境の変化を踏まえ、政府は1999(平成11)年に「中小企業経営革新法」を定めた。また2005(平成17)年には、「中小企業新事業活動促進法」で、さらに中小企業の新たな取り組みの促進を図り始めた。しかし、中小企業における経営革新への取り組みが活発に行われているとは言い難い状況である。経営革新計画の承認件数を見ても、伸びていない(表1)。

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