2016年4月12日、第5回「未来投資に向けた官民対話」が開催され、第四次産業革命・イノベーションについて議論が行われた。その最後に、安倍晋三首相が議論を踏まえて発言し、そのなかで中小企業に対してIoT(Internet of Things)の導入支援について言及した。

 中小企業支援についての発言内容は次の通り(首相官邸Webサイトに掲載された首相の発言記録から抜粋)。

「中小企業の第四次産業革命への対応をしっかり支援してまいります。2020年までに、ロボット導入コストを2割削減し、ロボットシステムの導入を支援する人材を3万人に倍増します。あわせて、中小企業のIT化をサポートするため、今後2年間で1万社にIT専門家を派遣します。」

 第四次産業革命は、ITを駆使して製造業を改革する取り組みの総称であり、ドイツでは製造業のIT化を進めるプロジェクトとして「インダストリー4.0」が提起され、米国でもGeneral Electric(GE)が主導して「インダストリアル・インターネット」の取り組みが進められている。こうした取り組みを支える中核技術がIoTであり、そこにはビッグデータを活用した新しいビジネスモデル創出も含まれている。

 国内ではすでに、日本経済再生に向けた戦略をまとめた「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」において、新時代への挑戦を加速するものとして、第四次産業革命が明記されている。

昨秋から国内での取り組みも活発化

 昨年(2015年)秋以降、中小企業向けのIoTに関する取り組み活動が顕著になってきた。例えば、法政大学 デザイン工学部の西岡 靖之教授らが発起人となり、ものづくりとITが融合した日本発の標準モデルを作り世界に発信することを目的としたフォーラム「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)」。ここの「中小企業試作ネットワーク」WGにおいて、中小企業同士のネットワークによる「つながる町工場」を試みている。

 また、日本経済再生本部において決定された『ロボット新戦略』を推進するために、関係団体等が政府との連携の下、課題の共有と解決のための横断的な取り組みを行う組織である「ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)」でも、取り組みが進んでいる。同協議会の「IoTによる製造ビジネス変革ワーキンググループ」に、「中堅・中小企業サブ幹事会」を設置し、具体的な導入支援の方向性についての中間取りまとめを4月上旬に公表している。

 そして日本商工会議所は、今年初めに「中小企業IoT・クラウド活用研究会」を発足。「中小企業のIoT推進に関する意見」を取りまとめ、各界へ提言した。この意見書では、人材活用にも言及している。中小企業でもIoTの導入・活用は不可欠だが、ITに詳しい人材が深刻な不足状態であるためだ。そのため研究会では、ITに詳しいシルバー人材や就業経験のある女性など、有用な人材と中小企業とのマッチングについても検討する。

 また、ITコーディネータ協会の「つなぐIT推進委員会」では、10年以上にわたって進めてきた中小企業EDI※普及という課題の解消策を、「情報連携による製造と金融との融合」として提起している。

※EDI:Electronic Data Interchangeの略。異なる企業間で、ネットワークを通じて商取引に関する情報を交換すること。

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